2桁白星王手の朝乃山「英乃海関の柔らかさ覚えていた」木瀬部屋での出稽古で相撲勘取り戻す

朝乃山(左)は英乃海を寄り切りで破る(撮影・河田真司)

<大相撲秋場所>◇11日目◇24日◇東京・両国国技館

大関経験者で西十両13枚目の朝乃山(31=高砂)が、3連勝を飾り、2年4カ月ぶりの2桁白星に王手をかけた。西十両7枚目の英乃海を寄り切って9勝2敗。錦富士、同部屋の朝白龍と並び、十両優勝争いのトップを守った。昨年7月の名古屋場所4日目に、左膝前十字靱帯(じんたい)断裂などの大けが。長期離脱を強いられ、今場所は史上初めて2度の三段目転落から関取に復帰した。大けがした取組の相手、前頭一山本のもとに場所前に出稽古。迷いなく場所に臨み、日増しに力強さが出てきた。

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「富山の人間山脈」の異名通り、朝乃山の相撲はどっしりと力強かった。痛々しい、左膝に施された大きなサポーターとは対照的。立ち合い直後に左上手を引くと、前に出ながら右も差して、英乃海に何もさせずに寄り切った。「攻めていけば膝にも負担がかからない。前に出られたのがよかった」。相撲界の通説で、引いたり、はたいたり、下がった時にけがをするといわれる。攻撃は最大のけが予防。完璧な白星だった。

経験と感覚、体、全てがかみ合ってきた。英乃海とは3度目の対戦で全勝。前回対戦は「2018年春場所以来」と自ら語り、7年前の記憶も鮮明だった。先場所前には、相手が所属する木瀬部屋に2日連続で出稽古。その2日間で、英乃海とは10番ほど取ったといい「胸を合わせた時の英乃海関の柔らかさは覚えていた」と、経験と最新の感覚を擦り合わせた。そこに取組で日に日に取り戻した相撲勘、体の使い方が融合。“強い朝乃山”が戻った。

3月春場所で三段目から再起したが「ずっと心に引っかかるものがあった」という。それが左膝を大けがした取組で対戦した、同い年の親友一山本の存在だった。すでに何度も顔を合わせ、わだかまりもない。ただ「けがして以来、稽古でも相撲を取っていない。モヤモヤしたものを消したかった」と、初日を3日後に控えた今月11日、一山本の放駒部屋へ、タクシーで片道約4000円かけて出稽古。幕下島津海と2人を相手に計15番ほど取り、一山本に「来てくれてありがとう」と言われた。一山本も胸のつっかえが取れた。

2桁白星を挙げれば、東前頭14枚目で12勝3敗の優勝次点だった23年夏場所以来、14場所ぶりとなる。その間、皆勤は5場所のみ。大けがする前にも、けがで途中休場や途中出場が相次いだ。再起後に増えた言葉は「相撲を取れる喜び」。勝ち負けを超越した真っ向勝負の毎日は充実感にあふれている。気力充実で、1場所でも早い幕内復帰を見据えている。【高田文太】

<近年の朝乃山の浮沈>

◆21年5月 新型コロナのガイドライン違反で夏場所12日目から謹慎休場。翌名古屋場所から6場所出場停止処分で大関から陥落。

◆22年7月 西三段目22枚目で7戦全勝で優勝。

◆23年5月 東前頭14枚目で12勝3敗と優勝次点。

◆同7月 左腕負傷で名古屋場所8日目から4日間休場して8勝4敗3休。

◆同10月 秋巡業で左ふくらはぎ肉離れ。11月の九州場所は8日目から途中出場して4勝4敗7休。

◆24年1月 初場所は右足関節捻挫で9日目から休場して、9勝3敗3休。

◆同5月 3年ぶりに三役も右膝を痛めて夏全休。

◆同7月 名古屋場所4日目の一山本戦で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂。東前頭12枚目で3勝2敗10休。その後は3場所全休。

◆25年3月 西三段目21枚目で4場所ぶり復帰。

◆同7月 西幕下筆頭で5勝2敗として十両復帰。

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