「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」で知られるエクスコムグローバルの西村誠司社長(56)が、大相撲への愛を語りました。このほど、日刊スポーツの大相撲担当・佐々木一郎記者と対談。そのもようを3回にわたって連載します。第2回は、西村社長が語る大相撲の魅力と、藤島部屋を支援する理由をお送りします。
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佐々木 西村社長は、どういうところに大相撲の魅力を感じていらっしゃいますか。
西村 ボクシングや柔道には、体重別の階級があります。でも大相撲は、今回関取になった嵐富士が172センチで、体重が200キロ近い一意がいたりする。ある意味、実社会と一緒。生まれた時の家柄、体つき、脳みそ、不平等からスタートして社会が成り立ってるじゃないですか。その中で自分で創意工夫しながら努力を重ねていくっていうのが、実社会の縮図のようです。
佐々木 今、お話聞いてると、ひょっとして西村社長は自分の人生を重ね合わせて見ているのでは。
西村 そうなんです。それで、体が小さいからと言い訳するわけじゃなく、低く当たるのか、どういう戦い方するのか。それをまたファンが応援してっていうのがすごく好きです。炎鵬関の復活劇なんて、まさにそうじゃないですか。首に爆弾を抱えて、もう一歩のところでまた悔しい思いしながら、またチャレンジして。十両に復帰した時には、もう誰もが感動しましたよね。
佐々木 まさに大相撲は無差別級で、その体重制限のないところが面白さの1つですよね。
西村 藤島部屋で言ったら、藤天晴もそうです。小さいじゃないですか。幕下筆頭から3枚目まで下がりましたけど、そこでどう自分がバルクアップするのか、取り口を変えるのか。努力をしながら、再び上を目指す。苦悩もありますが、そこから何か生み出されるストーリーがあると思うんです。
佐々木 西村社長が、藤島部屋を後援するようになったのはどういうきっかけだったのでしょうか。
西村 元々、武双山関(現在の藤島親方)が好きだったんです。初優勝した時の15番の動画は、もう何回も何回も見ました。大関になった時の口上は「正々堂々」で、この言葉は藤凌駕関の化粧まわしにも使いました。やっぱり真っ向勝負で、押し相撲が好きなんです。
佐々木 正々堂々の押し相撲といえば、まさに武双山関ですね。現役時代に1度も立ち合いで変化していないと思います。
西村 そうですよね。だからお弟子さんたちも全員そうですよ。変化はもう絶対ないです。
佐々木 藤島部屋の力士が変化したら大変なことになりますね。
西村 なります。絶対ないです。そんなの絶対ないですよ。ある意味ハンディですし、もちろん変化は1つの技術であり、反則ではありません。だから、この前、藤青雲関にも、相手の変化に対してどう対応していくのかということを話したんです。やっぱり正々堂々の相撲が好きなので、横綱の変化はどうかと思います。
佐々木 確かに会場に来てる人、見てる人に対しての顧客満足度からすると、熱戦にはならないので、ちょっとがっかりしてしまうケースはあるとは思いますね。ただ、どうしても勝ちたい気持ちも分かります。
西村 分かります、分かります。でも私は、横綱貴乃花も好きで、立ち合ってから相手の得意な相撲を取らせる余裕があって、でも最後は横綱相撲で勝ちきる。私はそれでこそ横綱、横綱相撲で勝つような強さがあってほしい。横綱はそうあって欲しいと思うんですよね。
佐々木 確かに貴乃花の全盛期は、相手に好きなだけ力を出させて、そっからで勝っちゃう強さがありました。全部受け止めて、相手の力を出し切らせて勝つ。私たちは新聞記者なので、「横綱相撲」という言葉のニュアンスは大事にしたいと思っています。圧倒的に勝つことが横綱相撲ではなく、全部受け止めて、相手に力を出し切らせてでも勝つのが横綱相撲。これはたまに話題になりますね。なんだよっていうことはたまに話になります。
西村 そうなんですよ。ああいうのがかっこいいと思うんですよね。
佐々木 実は春巡業以降、藤青雲関、藤凌駕関、藤島親方に西村社長の印象を聞きました。皆さん「とにかく腰が低い」「あんな大社長なのに全然偉そうじゃない」っていうことを口をそろえておっしゃっていたんですよ。これは、信念があってのことなんですか。
西村 それは、全ての関わってくれた人に対するお礼というか、感謝というか、リスペクトだったり、そういう気持ちしかないんです。誰からそうしろよって言われたわけではないんですよね。じゃあ一生そうだったかっていうとそうではなくて、若い時には多少調子に乗ってたところもあるんですが、年々そんな感じになってきました。
ちょっと質問からずれるかもしれませんが、やっぱり藤島親方の指導もそういうところがあります。自分の番付がどれだけ上がろうが、ひょっとしたら横綱になろうが、礼儀正しく、腰を低くやるみたいなしつけが要所要所にあって、僕もそういう考え方ではあるんですよ。そこが親方の好きなところでもあります。私の価値観というか、相手が何も実績ない年下の人でも、丁寧に接してかなきゃいけない。私の美学もあったりするんで、そこがすごく合ってるんですよね。そのしつけがちゃんとされていて、関取たちが付け人に対してすごく敬意を表してるような雰囲気だったりとかが、部屋としていいじゃないですか。
佐々木 そうですね。昔ながらの相撲部屋らしい相撲部屋という感じはすごくします。保守的と言えば、ちょっとネガティブな感じが出てしまうかもしれませんが。
西村 私はそういう藤島部屋が好きなんですよ。もちろん番付を上げるのはいいけど、来てくれたお客さんが「今日の取組よかったよ」って言ってくれるような相撲が取れたらいいと、関取たちにも言っているんですよ。(つづく)
◆西村誠司(にしむら・せいじ)1970年(昭45)5月20日愛知県生まれ。生活保護を受ける家庭に育ち、中学から新聞配達。名古屋市立大経済学部卒業後、93年アクセンチュア入社。95年に起業。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」など、さまざまな事業を展開している。現在の年商は333億円にまで成長。TikTokフォロワー数8万。