ランナーコーチで9回も連載できるのか? そんな声もあった中、腕を回し続けて最終回。川島敏男さんの著書「三塁コーチャーバイブル」はまだまだ奥義を秘めているが、当連載はひと区切りつけます。「ランナーコーチとは」。あらためて確認します。
連載1回目の川島さんの結びの言葉を振り返る。「一番近い場所でプレーを見るのは、最高のイメージトレーニングです。コーチャーの仕事を覚えるのは、ランナーの動きを覚え、ボールに集中することで、野球がうまくなる近道です。自分をアップデートする場所なんです」。
チームによって専門ランナーコーチもいれば、人数の関係で、出場選手が交代しながらやることもある。少人数を悲観することはない。全員が熟知すれば、最強の戦力になるからだ。そして、ランナーコーチがいなければ、自分だけで野球はできないことに気づく。
先日取材したある試合、痛烈な打球が投手の足を直撃した。痛みで立ち上がれない投手の元に真っ先に駆けつけたのは、相手チームの一塁コーチャーで、冷却スプレーを患部に吹きかけていた。
高校野球でよく見かけるようになった光景で、球児のマナーとしても定着してきたが、とっさに行動に移れるのは、状況をふまえた判断力と、対戦相手をリスペクトする思いやりがあるからだろう。ランナーコーチは、得点のために相手が嫌がるスキを突くこともあれば、全体を見通し、人間力を養う場所でもある。
川島さんのラストメッセージを読んで欲しい。
野球にはいろいろな居場所があります。
試合に出ている9つのポジションだけでなく、野球部員の数だけ、居場所はあるし、つくることはできると思っています。
ボール拾いをするのも、バットを引くのも、ランナーのプロテクターを外す係、審判にボールを渡す係、スタンドで応援することも、創意工夫で自分だけのオンリーワンの野球の居場所にすることは可能です。
ランナーコーチも、野球の居場所です。野球には、常にオンリーワンの居場所がある。それを気づかせてくれます。
それが野球の一番の魅力だと思っています。(この項終わり)【久我悟】