[ 2014年7月15日7時50分

 紙面から ]<W杯:ドイツ1-0アルゼンチン>◇決勝◇13日◇リオデジャネイロ

 アルゼンチンは1点が遠かった。86年メキシコ大会以来、3度目の優勝に届かなかった。主将のFWリオネル・メッシ(27=バルセロナ)は、FKも含めて両チーム最多の4本のシュートを放つも不発。大会の最優秀選手に贈られるゴールデンボール賞を受賞したが表情は硬いまま。86年大会で優勝に導いた「神の子」マラドーナ氏に追いつくことはできなかった。

 リオデジャネイロの夜空を見上げると、メッシは口元をゆるめた。1点を追いかける延長後半ロスタイムに、自らFKを獲得した。PK戦まで戦った準決勝から中3日。120分をすぎ、体力は限界だった。疲労が蓄積した左足で放ったシュートは、抑えが利かず、枠を外れた。その瞬間、敗戦を覚悟したような笑みを見せた。「このような形で敗退するのはつらい。チャンスもあったしもう少しできた」と涙はなかった。

 両チーム最多の4本のシュートを放ったが、枠内は0本。今大会は、少ない走行距離が批判された。決勝の立ち上がりは守備にも走り、優勝への強い思いを表した。しかし時間が経過すると、前線を歩くだけ。1次リーグ3戦連続の4得点が評価され、大会MVPを受賞したが「それは悲しい賞だ。なぜなら、アルゼンチンに優勝トロフィーを持ち帰りたかったから」と話した。

 友との約束も果たせなかった。バルセロナのチームメートで、準々決勝コロンビア戦で大けがを負ったブラジルFWネイマール。電話で連絡を取り「僕はアルゼンチンの国民のためと、君のために優勝を目指して戦うよ」と伝えた。その言葉を聞いたネイマールは涙したと、ネイマールの父が英BBCに明かした。

 大会前から不安視されていた体調も、最後まで上がらなかった。試合ごとに疲労は蓄積し、父ホルヘ氏に「足が100キロもあるように感じる」と訴えていた。この日の前半も、ピッチ上で嘔吐(おうと)。精密検査をしても原因は分からず、サベラ監督は「過度なプレッシャー」と精神的な原因を挙げていた。

 86年大会で、同国を優勝に導いたマラドーナ氏と同じ主将、背番号10の左利き。優勝を目標に掲げたが、周囲の期待、自分への要求が重すぎたのか。「神の子」にはなれなかった。

 ◆ゴールデンボール賞の選考方法

 準決勝終了後、候補者のリストが発表される。試合を取材する世界各国の記者と、元日本代表主将の宮本恒靖氏も属するFIFA技術研究グループ、さらにインターネット上のファン投票で決まる。必ずしも優勝チームの選手が受賞するわけではない。