特別連載「ザ・真相-AKB48選抜総選挙」の第2回は、初めてマスコミが集った10年6月の第2回総選挙の裏側です。ガチンコの略称のガチという単語がメディアを通じて拡散、国民的大ブレークへのきっかけとなったイベントだった。

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 AKB48の知名度を上げたのは、紛れもなくAKB48選抜総選挙。ただ、第1回を取材した新聞社は数社でテレビ局はゼロ。日刊スポーツも私が、見学として足を運んだ。目の前の衝撃に会社に慌てて連絡したが、デスクには理解されずに結果はわずか4行。ファン以外は誰も注目しなかった。

 しかし、日刊スポーツは「将来的に大勢が興奮する一大イベントになる」と確信。翌10年の第2回開催時に全立候補メンバー108人を紹介する長期連載を敢行したが、社内では、無名メンバーの連載を疑問視する声ばかり。正直「スポーツ紙の読者層ではないアイドルファンに買ってもらいたい」という色気だけで実現した企画だった。

 それでも、世の流れは芸能界内の感覚より速い。同時期に放送されたメンバーによる“学芸会風”連続ドラマ「マジすか学園」が同世代の人気を獲得。秋元康氏が「イントロを聴いただけで絶対に名曲になる」と自信を持っていた「ポニーテールとシュシュ」が投票権付きシングルになると、メンバー名は知られなくとも、曲が街中に流れ、大勢の耳にメロディーが残った。

 6月のJCBホールでの本番。3月の第2回総選挙の開催発表時には全く見向きもしなかった、ほかの新聞社やワイドショーのテレビカメラが詰めかけた。ある情報番組プロデューサーは「第2回は関係者へのあいさつで顔を出しただけでした。でも、アイドルたちの想定外な壮絶なやりとりを目の当たりにして驚きました」と振り返る。

 芸能界は台本ありきで予定調和な流れが基本。初めて本格的に「ガチ」に挑んだことで、ファンに次ぐ2番目の目撃者のマスコミの琴線に触れた瞬間だった。【瀬津真也】