昨年の第9回AKB48選抜総選挙は、NMB48須藤凜々花(21=卒業)が突然、結婚宣言し、ファンやメンバー、スタッフのみならず、世間を騒がせた。衝撃の宣言後、現場では一体、何があったのか? 舞台裏に潜入した記者が、関係者の証言などを総合し、騒動を振り返る。

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 総選挙史上、最大級の“事件”だった。20位で名前を呼ばれた須藤は、ファンへの感謝もそこそこに、しおらしく語り始めた。

 「初めて、こんなに好きになれる人に出会えました。アイドル人生に一点の曇りもなく、うそ偽りなく、皆さんのことを人間・須藤凜々花として、大好きでした。だから、これから私が結婚をするという気持ちも本気です」

 司会の徳光和夫アナから「結婚するんですか?」と問われ、あらためて「結婚します」と言い切った。「恋愛ご法度」という鉄のおきてをあざ笑うかのような、結婚宣言だった。

 東京のデスクから記者に指示が飛ぶ。「須藤を捜せ」。指原莉乃の3連覇も、渡辺麻友の卒業発表も二の次になり、後ろ髪を引かれるように控室へ走った。体育館ほどの大きさの部屋で、須藤を捜したがどこにもいない。あるスタッフが言った。「須藤なら帰りました」。宿舎へは大人数でのバス移動が基本で、1人だけ帰るのは不自然。「逃亡」と思われても仕方なかった。

 48グループにとって、総選挙は1年の総決算だ。ある人気メンバーは、神聖なイベントを汚され、荒れに荒れて女子トイレで叫び続けたという。

 関係者によると終演後、須藤に食い下がったメンバーがいた。昨年、AKB48を卒業した島田晴香さん(25)だ。「何であそこで言ったの?」。疑問や不信感を持つメンバーに説明するための「事情聴取」だったが、須藤の言葉は「すいません」の一点張り。真意は語らなかった。それでも後日、須藤から「地上波にも流れ、世間の人々に伝わりやすい場だったというのが1番の目的でした」と謝罪があったという。

 テレビで生中継され、ファン以外の多くが結果を注視する一大イベント。過去にもスピーチで願望を直訴したり、卒業発表するメンバーもいた。影響力の大きさを最大限に利用した行動は、一気に拡散するSNS時代ならではの「事件」だった。【森本隆】