SKE48松村香織(29)の卒業公演を取材した。松村の出身地、埼玉の大宮ソニックシティで開催されたが、平日にもかかわらず2公演とも約2500人を動員し、計約5000人を動員するものとなった。

松村は昨年9月、愛知・名古屋国際会議場センチュリーホールで開催された「SKE48リクエストアワー セットリストベスト100 2018~メンバーの数だけ神曲はある~」1日目夜公演で、突然「卒業します~!」と笑顔で卒業宣言した。この日も取材していた記者は、あまりにもあっけらかんとした卒業発表に、その一報を伝えたネット記事には「本気とも冗談ともつかない卒業宣言」と書いたほどだった。

卒業発表もあるかもしれないが、記者の目にはメディア露出やイベント出演など、プチバブル状態だったように映った。「これはマジで気が変わって撤回もあるかも…」。そんな思いで取材に向かった卒業コンサートだった。実際、コンサートを見ていてもなぜか“撤回”しそうな雰囲気を感じ、実は「卒業撤回」の予定原稿も用意していたほどだった。だが、それは徒労だった。

演出や選曲など、全てが松村プロデュースだったことを自ら宣言した。その宣言によって、厳しいことを言えば「自らの演出で自ら泣く」という状態に若干の戸惑いもあったが、それも卒業公演ということを考えれば仕方のないことかもしれない。だが、涙を流したのは数回で、ほぼ笑顔だった。あれだけ笑って卒業できるのは、本当にやりきったからかもしれない。

SKE48に加入する前のこともさらけ出し、笑いに変えた。唯一残った3期生同期の須田亜香里(27)と「NGなし」ではキャラかぶり感もあるが、松村は自らをさらけ出すこれまでのアイドルにない新種(?)アイドルだった。

アイドルとして最後を飾るシーンは、さすがに記者も感動的なシーンを思い描いていた。だが、それは見事に裏切られた。ステージの床が抜け落ち転落、松村は白い粉まみれになった。「やられた…」。思わず、そうつぶやいていた。と同時に「さすが松村! そこまで演出するとは」と思った。だがその瞬間、松村の「聞いてないよ~」というせりふが耳に入った。「ん? 運営サイドの演出なのか?」。記者の頭の中は疑問符が渦巻いたが、思わず噴き出してしまった。アイドルの卒業コンサートの最後が粉まみれ。記者にとっては前代未聞で、初めての経験だった。

公演後本人に確認すると、無言でほほ笑んでいた。あのほほ笑みがどっちなのか気になるところだが、松村らしい卒業コンサートだったことは間違いない。