女子アナ、女優…AKB卒業後の進路も悲喜こもごも

AKB48を卒業し女子アナの道に進む中村麻里子(2016年5月27日撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

 3月が別れの卒業の季節となるのは、学校だけではなくなってきました。AKB48は今月、立て続けに卒業公演を催しました。卒業メンバーは、相笠萌(18)梅田綾乃(18)大和田南那(17)西野未姫(17)、そして今夜30日の中村麻里子(23)です。相笠は、4月から大学へ進学。梅田はグループ在籍時から舞台女優として活躍中で、卒業翌日から新しい所属事務所に移籍しました。大和田と西野も、引き続きの芸能活動を希望中。中村は、神戸のテレビ局サンテレビに契約アナウンサーとして入社することになりました。

 AKB結成11年目ですが、3月下旬に卒業公演が集中したのは、初めてのことです。ただ、新年度の4月からは新しい活動を始めやすく、区切りをつけやすいのは、一般の学校と同じということでした。

 特に、姉妹グループを含めるとメンバーが約400人。その中で、テレビに出られるメンバーは、限られたごくわずか。毎日の劇場公演ぐらいしか仕事がなく、活動範囲が広がらないメンバーも増えてきていて、グループの知名度を使って「スターになる夢」を諦めて、学業に戻ったり、一人で身を立てようとする子も、その分多くなってきたということでしょう。

 同じ卒業でも、やはりそこにも「差」が存在しています。中村は、AKB48選抜総選挙には1度もランクインしたことがない、いわゆる人気の高くないメンバーでした。センターはおろか、CDシングルを歌ったり、テレビ音楽番組に出演できる選抜メンバーにも選ばれることはありませんでした(じゃんけん大会の運では1度だけ選抜経験あり)。ただ、マジメな性格がスタッフに評価され、秋元康にまで評判の良さが伝わり、AKB48グループドラフト会議などのグループのビッグイベントの司会に大抜てきされるようなこともありました。

 そして今回、自らの足で就職活動をして、アナウンサーへの道を切り開きました。いくらAKBの元選抜メンバーといった人気者でも、卒業後はまともに芸能活動できずにセミプロ止まりで苦しんでいる子も多い中、ひとまず契約とはいえ、女性の憧れの職業の1つ、アナウンサーの座を勝ち取ったのです。まさに、最後の最後に一発大逆転した、大勝利の卒業でした。

 一方、大和田は、デビューわずか1年の14歳時に、連続ドラマの主演に大抜てきされるなど、エリート街道を歩んでいきました。ただ、本人の心の成長は、なかなかそのスピードに追いつけませんでした。少し伸び悩み始めた昨年夏。先輩の西野とともに、深夜のゲームセンターで男友だちと遊んだところを写真に撮られ、それが週刊文春のネット記事で報じられたことで、やむなくグループの最前線から退くこととなりました。

 AKBは、10代の女子を預かるグループですから、日々のコンサートなどでも、未成年の労働時間厳守は徹底しています。たとえば、総選挙などのビッグイベントでも、午後9時前には、必ず中学生以下のメンバーをステージから下ろさせます。国民的アイドルグループとして、法律だけは絶対に守らなければならない使命があります。よって、大和田と西野が、ゲームセンターのあった地域の青少年健全育成条例の違反に当たる行動は、ある意味、有名な恋愛禁止ルールよりも重い事態だったのかもしれません。

 AKBの運営は、何かの処罰をしたとは明言をしていませんし、あくまで2人とも「新しい道に踏み出すため」と卒業理由を語りました。ただ、西野の卒業公演の寸劇の中では、ブラックジョークとしてAKBの運営スタッフから怒られていた事実を明かしました。

 たかが夜遊び、たかがデートでしたが、責任ある立場だっただけに、その失敗は簡単に取り返せるものではありませんでした。

 ただし、まだまだ2人は17歳。大和田は、かわいいルックスで人気でした。別のアイドルとしてなのか、女優としてなのか分かりませんが、再びスポットライトを浴びるチャンスは、きっとどこかにあるはずです。

 西野は、グループいちのオーバーリアクションが持ち味で、バラエティー才能にあふれたユーモアなメンバーでした。本人は「『世界の果てまでイッテQ!』のレギュラーになって、イモトさんのように活躍するのが夢」と言っています。個人的には、イモトに負けないおもしろいリアクションができると思っています。ツボにハマったら、彼女の才能を生かすプロデューサーなどに出会えたら、必ずやタレントとして花を咲かせると思っています。

 いつどこで逆転ホームランが出るかは、誰にも分かりませんし、誰にでも可能性があるのです。そう、中村のように。