小嶋陽菜涙で卒業 4151日のアイドル人生に幕

卒業公演で歌う小嶋陽菜(中央)(C)AKS

 AKB48小嶋陽菜が29歳の誕生日の19日、東京・秋葉原のAKB48劇場で卒業した。1期生としてデビューしてから11年5カ月。AKB48グループでは最後の昭和生まれで、黄金期を引っ張った初期メンバーの最後のビッグネームが、制服を脱いだ。1期生としてともにグループを引っ張ってきた高橋みなみ(26)がエールを送った。小嶋は今後、モデル業を中心としたマルチなタレントとして活動していく。

 長らくAKB48に尽くしてきた小嶋には、最後にとっておきのお返しが待っていた。育ての親、秋元康総合プロデューサーからの卒業証書代わりの手紙だ。

 「フニャフニャしてて手を抜いているようにみえて、実は誰よりもまじめで責任感があって、AKB48を愛し続けてくれた君に、心の底から感謝します」

 「2年前に卒業していたら、こんな手紙をいただけなかった。長くやってきて良かったと思える1番の出来事かも。やってて良かった…」と、大粒の涙を流して受け取った。「同期が次々にやめていっても、私はAKB48が好きだから続けてきたの」。14年5月に起きたAKB48握手会襲撃事件で、卒業を思いとどまり、グループへの恩返しのために活動してきた。全てが報われた瞬間だった。

 卒業公演にも、小嶋の優しさと愛が詰まっていた。1曲目からAKBメンバー全88人と歌った。同期生でユニットのノースリーブスを8年共にしてきた高橋みなみと峯岸みなみとも歌った。2月の卒業コンサートでは、前田敦子ら元祖神セブンで披露したデビュー当時の思い出の曲「スカート、ひらり」は、「次世代を担うかわいい新神セブンと一緒に」と、エース向井地美音や13歳の久保怜音らとミニスカートを翻した。

 3月31日に卒業特集が組まれた音楽番組「ミュージックステーション」でも、118人もの後輩たちを出演させて、全メンバーの名前をクレジットでも画面に流してあげ、タモリに促された最後のあいさつでも、自分のことではなく「今後のAKB48もよろしくお願いします」と、グループを売り込んだ。ずっと冗談と脱力スタイルで照れを隠してきていたが、秘めていたグループ愛は、重さも意味も深かった。

 この夜のアンコールでは、デビュー曲「桜の花びらたち」を歌い終えると、「これから困難があって不安になっても、12年前の私たち1期生も同じ気持ちでここでこの曲を歌っていました。だから、この劇場があるみんなも、きっと何でも乗り越えられる」と、泣きじゃくる後輩たちを励ました。お決まりの「卒業後の私もよろしく」などとは、最後までひと言も口にしなかった。

 気の遠くなるほどの4151日を、軽やかに、粋に、生き抜いた。誰にもマネのできないアイドル人生だった。【瀬津真也】