JURINA黒星にも「負けたら始まる人生もある」

敗れたがマイクアピールするハリウッドJURINA(SKE48松井珠理奈)(撮影・柴田隆二)

 AKB48が、5000人の大観衆を集めて、昨年8月の後楽園ホール大会以来、2回目のプロレス興行を開催した。昨年にテレビ朝日系で放送されていた連続ドラマ「豆腐プロレス」の役柄そのままに、リングに登場した。

 ついに始まったメイン試合は、中日スポーツ杯争奪タッグマッチ。絶対女王ハリウッドJURINA・シャーク込山組対オクトパス須田・道頓堀白間組は、昨年8月の後楽園大会の因縁をひきずった決着戦となった。

 半年前のメイン試合で、事件は起きていた。JURINAは、白間とのタッグで、WIPタッグ王座をつかんだが、勝利の雄たけびを挙げていたその瞬間。須田から急襲のシャイニングウィザードを食らってKOさせられた。栄光から一転、大恥じをかかされる屈辱を味合わされていた。

 しかも、パートナーの白間は、その後にJURINAを裏切り、須田とまさかのタッグを結成。相棒のいなくなったJURINAは、半年前に自分に挑戦を挑んできていた若手の込山と、手を組んだ。

 名古屋出身のJURINAと須田が先発。5000人超満員の観客は、ともに大コールで声援する。「ベルトを返してもらうよ」(JURINA)。「やれるもんならやってみろ」(須田)。挑発し合っての、歯を食いしばりのエルボーの撃ち合い。須田のオクトパスホールドをよけたJURINAのレインメーカーを、須田が軟体ブリッジでかわす。いきなりお互いに大技を仕掛けるプライドがぶつかり合った序盤戦となった。

 白間対込山では、込山がフライングメイヤーを繰り出すも、ダースベーダーズの妨害で場外に落とされる。そのまま、須田がインディアンデスロックからの鎌固めへ。白間も4の字固めと、込山を畳み込んでいく。

 しかし、WIPタッグ王座の次期挑戦者にまで登り詰めた込山も、ドロップキックで応戦だ。

 女王JURINAが登場すれば、鬱憤(うっぷん)を晴らすように、エルボーアタックからのフェイスクラッシャー。須田と白間をまとめて片エビ固めで絞りあげる。

 ただ、白間も負けてはいない。セクシーなヒップアタックで対抗した。

 込山と白間の戦いも激しさを増していく。込山が十字固めを決めれば、白間はドラゴンスクリュー。お互いがヒザを顔面にぶち込み合って、ダブルノックダウン。

 JURINAのスピアーが須田に突き刺さるが、アイスブレイクは、須田が軟体ブリッジで交わして、DDTで逆襲。

 込山のスリングブレード。白間のフィッシャーマンズスープレックス。両パートナーが瀕死(ひんし)の中で、JURINAが須田にローリングJURINAを食らわし、カウント3が入った…かと思わせた。その瞬間、妨害するフードをかぶった謎の選手が現れた。正体は、白金ジムのJURINAの後輩のディーヴァおだえり。まさに寝返りの急襲だった。さらに、そのおだえりと次回のWIPインターコンチネンタル王座決定戦で戦う谷口が、おだえりを蹴散らしにリングに上がる。大混乱のリング上となってしまった。

 そんな混戦の中で、白間がJURINAにトップロープからのフットスタンプ。込山もスリングブレード、須田もシャイニングウィザード。必殺技の応酬だ。

 そして女王JURINAが、須田を仕留めに掛かった。アイスブレークから新技カミゴエをさく裂。そこから必殺技のディスティーノを狙った。

 しかし、この日は須田の気力が勝っていた。そのディスティーノを防ぐと、JURINAの後頭部に強烈なシャイニングウィザードを突き刺した。最後は顔面に再びのシャイニングウィザード。完璧な3カウントで大番狂わせの大勝利をつかんだ。

 試合後のマイクアピールは、白間から始まった。

 白間 JURINAを裏切ったのは、JURINAよりも上に行くためや。次は私がJURINAから直接奪い取ったるからな。今の弱いJURINAから(勝利を)取っても意味無いわ。もっともっと強くなりや! じゃないと奪いがいがないからな。

 続いて、この日のヒロインになった須田だ。

 須田 おい! 矢崎(プロデューサー)、マスコミの皆さん、JURINAの地元凱旋(がいせん)って言ってましたけど、私も愛知県出身なんだよ! 今日の一番の主役は、JURINAでも私でもない。ファンの皆さんなんだよ! 主役の皆さん、どうせJURINAが勝つと思ってたんだろ! 「そんなことないよ」じゃねぇよ。なぁ、期待に100%応えるのも悪くねぇが、100%裏切るのもいいだろ(ニヤリ)。今日、ディーヴァおだえりがダースベーダーに入った。プロレスを楽しみたいお前ら、黙って私の手のひらの上で転がってろ! おい、JURINA、なぜ、私がベルトを盗んだのか分かるか? ベルトが欲しいからじゃねぇ。こうでもしねぇとお前との試合が組まれねぇからだよ!! もう、このベルトは必要ねぇから、返してやるよ。今日は勝った! これで私が強いって分かったろ。このまま引き下がるんじゃねぇぞ。次の(WIPタッグ王座の)挑戦者は私しかいねぇよな? そこでWIPの景色を変えてやるよ。美人でチヤホヤされているのは偽者だ。私が本物を証明してやるよ。心臓がバクバクする試合見せてやっから、ダースベーダーから目を離すんじゃねぇぞ!

 意気揚々と引き上げるダースーベーダー軍団。一方、惨めな負け方をしたJURINAは、ようやく立ち上がり、静まり返った観客に向けて話し始めた。

 JURINA 皆さん、地元凱旋で負けてしまってごめんなさい。おい、須田、白間、いろんなことやってくれたな。お前らは、そんな勝ち方で本当に満足してんのか? 私はあいつらが実力だけで戦わなかったことを、今度このリングで後悔させてやる。全てを飲み込んで勝つのが、このハリウッドJURINAだ!

 込山 JURINAさん、私ももう負けません。もっともっと強くなって、あなたの前に立つ!! 私があなたの全てを飲み込みます。私が狙うは、ハリウッドJURINAの首、1つ!!

 JURINA 今日はこのような結果になってしまいましたが、負けたら始まる人生も、私はあると思います。だから、私ハリウッドJURINAは、これからもっともっともっともっと最高になってみせます。私のことが嫌いな人もいるかもしれません。でも、あの言葉を叫んでもいいですか? 愛知県体育館の皆さん、そしていつもWIPを応援してくださっている皆さん、愛してまーす!

 女王は故郷に錦を飾ることはかなわず、大番狂わせとなったが、最後だけは締めた。JURINAの首を、天下を狙う勢力が、さらに増大して終わった今大会。3回目以降の展開が、全く分からなくなってきた。