横山由依「最近だとお芝居がすごく楽しい」劇作家の根本宗子と初対談

対談した横山由依(左)と根本宗子は仲良くポーズを決める(撮影・滝沢徹郎)

AKB48横山由依(28)が、劇作家根本宗子(31)作・演出・出演の最新作、ブランニューオペレッタ「Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)」(10月6~7日、東京・日本青年館ホール)に主演することが決まり、このほど、初対談が実現した。【聞き手=大友陽平】

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今回の取材が、2人で直接対面する「はじめまして!」の場となった。

根本 (横山がAKBに)入った時から、一方的にファンとして見ていました。AKBはずっとファンで…。

横山 そうだったんですか!?

根本 初めてAKB48劇場に行ったのは、(07年12月~08年4月まで上演の)ひまわり組2nd「夢を死なせるわけにいかない」公演です。

横山 え~っ!? まだ私が入る前です(笑い)

根本 当時いろいろなものを生で見てみたくて、毎日ライブをやっているアイドルがいることを知って、どんな人たちなんだろうと友人と2人で。最初は顔と名前が分からなくて、どんどん知りたくなって、いろんなものを買ったり、握手会に行ったり…。当時はみんなと握手できたんですけど、前田敦子さんの“はがし”だけ、すごく強かったのを覚えてます(笑い)

横山 立派な“古参”ですね!

根本 横山さんは、柔らかい見た目やしゃべり方の中に、すごい強いものがあって、芯があって…。ご一緒して、せりふをしゃべってもらえるのはうれしいです。選抜総選挙のスピーチですごく泣いていらっしゃったじゃないですか? そんな“みんなのゆいはん”という印象です(笑い)。でも、たかみな(高橋みなみ)さんの後に総監督をやられた方って、相当の器の大きさというか、女の子をあれだけまとめるって普通の人生経験ではないですから…。単純にどういう方なんだろう? という興味がありました。

横山 根本さんは、新しいものをどんどん世に生み出されているという印象があります。根本さん自身、写真などを見てもすごくかわいらしい方で、お会いして「写真のままだ! 本物だ!」って(笑い)。ご一緒させていただけるなんて夢にも思ってなかったので、本当に幸せな気持ちです。

新進気鋭の劇作家として注目される根本にとって、1年10カ月ぶりとなる有観客の舞台は、新たな形の喜歌劇。演出家不在となった新作ミュージカルを、記者会見スタイルで楽曲だけ披露することになった女優たちの物語だ。音楽はチャラン・ポ・ランタンの小春が務める。コロナ禍もあり、稽古期間もできる限り短くし、あえて2日間3公演に限定するという新たな試みに挑戦する。

根本 日本発のミュージカルはこれまでもあるのですが、コアな層の方が見る機会が多くて、そこを自分が演劇活動の中で広げられたらいいなという思いで、ここ3~4年は音楽を積極的に取り入れてきました。今回は2日間だけのために新作の音楽劇を作るというのも、普通ではあり得ないことなんですけど、(主催の)ニッポン放送さんが乗ってくれて、本当におかしな人たちだなって(笑い)。おもしろがってくれて、形にしてくれて、キャストも第一希望の方々がそろってというのも本当に恵まれていますし、私も気合を入れた作品にしなければと思っています。

今回は「ブランニューオペレッタ(真新しい喜歌劇)」という新たなジャンルを提案する。

根本 オペレッタも、学芸会などのイメージがありますが、オペラまで曲数がなくて、ミニマムな感じですてきな作品がたくさんあるのに、日本ではなじみがあまりないんです。とはいえ、自分が作るものが、グランドミュージカルか? と言われると、ちょっと違うという意識がありつつ、オペレッタでもないものが多分できるので「ブランニュー」もつけました。ただただ楽しくやってきた20代を経て、演劇界にどう作品を残していけるかということを考えた時に、根本の作品ってこうだよねという、第1歩になる作品だと思います。お客さんに見ていただいて、何だと思ったのか、今からすごく聞きたいんです。

横山 お話を聞いて、ますます楽しみです! 私、歌がすごく好きなんです! 最近だとお芝居がすごく楽しいなと思うようになって、お芝居と歌が共存する世界こそ、自分がやりたいことが1番詰まっていると思っていたタイミングで今回の話をいただいて、ぴったりでした。お芝居で歌うのは初めての挑戦になるので、自分のすべてを詰め込みたいですし、根本さんがどういう演出をされるんだろう? ってすごく気になってるので、稽古場まで楽しみにしたいです。厳しくしてください!

根本 いやいやいや(笑い)

今回、主演に横山を起用したのは、総勢300人を超えるメンバーを束ねてきた、48グループ総監督としての経験も大きかったという。

根本 今回バンドも全員女性なので、女性のグループをずっと引っ張ってこられた人というのもありました。横山さんが感じてきたことがうまく乗る作品を私がご提案できたらいいなと思いました。

もう1つ大きな理由があった。

根本 私、横山さんの声がすごく好きで…。品があって女性らしい声なのに、どこか芯がある…。たかみなさんとかって芯があるしゃべり方をされるじゃないですか? 横山さんはあまり芯があるようなしゃべり方ではないんですけど、ご本人の味であるしゃべり方をキープしたまま総監督の役割についたというのが、すごく興味深かったんです。この声で言われるから受け取れるものも、きっとたくさんあるんだろうと思います。それに、劇場が大きくなればなるほど、演劇って細かい表情が見えないので、そうなった時にその人の声の持ってる力って、めちゃくちゃ大事なんです。今回日本青年館ホールという大きな劇場ですし、横山さんは大きいところでしゃべり慣れてもいます。今回は横山さんが自分でしゃべり出しているのか、せりふなのか分からないというところも狙っています。他のキャストの方もそうですし、いろいろな人のしゃべり方や、言葉を借りて作っていくので、どういうものになっていくのか私も楽しみです。

横山 (声がほめられ)うれしいです! 親に感謝します! 舞台のアンケートでも、すごく声が通っていたとか、きれいだったと感想をいただくことも増えたので、声は自分の中で1個持っておいていい宝物なんだなと思います。本番、1番良い状態で臨めるように、のどのケア、しっかりします(笑い)

体調管理はもちろん、初めての挑戦に向けて気持ちも高めていく。

横山 今は以前と比べてできないことも増えている世の中ではあるんですけど、そんな中で新しいものを世に出していって、その中にいられるというのはすごくうれしいことなので、私も全力でぶつかっていきたいなと思います。普段も女性グループにいますけど、また違ったものになると思うので、そこも楽しみながらできたらいいなと思います。

根本 横山さんをはじめとするさまざまな女性が生歌を歌っていくところが、すごい魅力になる部分だと思うので楽しみにしていただきたいですし、舞台に普段なじみがない方に見に来ていただいて、こんな感覚で見られる演劇があるんだということを知ってもらえたらうれしいと思っています。あとは横山さんの全力を見に来てください!

横山 頑張ります!

 

◆根本宗子(ねもと・しゅうこ)1989年(平元)10月16日、東京都生まれ。19歳で劇団「月刊『根本宗子』」を旗揚げし、劇団公演の作・演出を手掛けるほか、自ら出演することも。15年、映画「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」などの脚本を手掛けるほか、TBS系で放送中の「スター育成プロジェクト 私が女優になる日」ではゲスト審査員なども務める。

◆横山由依(よこやま・ゆい)1992年(平4)12月8日、京都府生まれ。愛称「ゆいはん」。09年、AKB48の9期生として加入。15年12月~19年3月までAKB48グループ総監督。フジテレビ系「ミライモンスター」などレギュラー。舞台は19年「美しく青く」や、今年は6月まで「熱海五郎一座 Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~」など出演。