ディズニー・アニメの代表的作品をティム・バートン監督が実写映画化した。

追い詰められた子ゾウが空を飛ぶ時の浮遊感、高揚感はどのように表現されるのか。29日公開の「ダンボ」には期待が大きかった。

動物愛護の観点から、なかなか見ることが出来なくなっているゾウやクマが主役の往年のサーカス公演。夕暮れの薄暗がりの中で繰り広げられたそんな「思い出の光景」が、バートン監督の怪奇嗜好(しこう)が相まって巧みに再現されている。

アニメ版は主人公のダンボを始め、母ゾウのジャンボやネズミのティモシーを擬人化することでストーリーを進めたが、今作では母を失った父子3人のサーカス団員ファミリーを軸に、団長やブランコ乗りの女性をクローズアップした人間ドラマが展開する。

耳の大きさをからかわれたダンボは、離ればなれになった母ジャンボに会うためだけでなく、追い詰められたこのファミリーや落ち目のサーカス団のために空を飛ぶのだ。

最新の技術で登場するダンボは、まさに「生身の動物」だ。やや大きめの目から自然に伝わる悲しみ、喜び…思わず身近な動物に重ねて見てしまう。愛犬家なら必ずやウルッとくるはずだ。

飛び方もリアルだ。飛び上がる際のじたばたするような力みは重力との戦いを実感させ、しだいに軽やかになる動きに納得感がある。

「猿の惑星」新シリーズ(11~17年)のような超リアルより一歩引き、少しだけぎごちなさを残したところにファンタジー世界を構築したバートン監督。随所にアニメ版へのリスペクトがにじんでいる。

第1次世界大戦の戦場から片腕を失って帰還したファミリーの父親役にコリン・ファレル、悪玉の興行師にバートン作品の常連マイケル・キートン、気の弱いサーカス団長にダニー・デビートと適材適所のキャストが、主役のダンボや子役の2人(ニコ・パーカー、フィンリー・ホビンズ)を引き立てる。きれいどころを一手に引き受けるブランコ乗りのエヴァ・グリーンは、薄暗がりにポッと光るように妖艶だ。

往年のサーカス光景は、年配者には懐かしく、子どもたちには一風変わったお化け屋敷のように新鮮に見えるのかもしれない。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)