新型コロナウイルスによるパンデミックに翻弄された2020年もあと数日で終わろうとしています。コロナ禍で人々の日常が激変した1年でしたが、ここハリウッドでもスターのコロナ感染や新作映画の公開が軒並み延期になるなど激動の嵐にもまれた1年となりました。そんな2020年も大物スターの死去やスキャンダル、ケイティ・ペリーら人気セレブの出産や結婚などおめでたいニュースもいくつかありましたが、改めて2020年のハリウッドニュース「トップ10」を振り返ってみました。

●トム・ハンクス夫妻が新型コロナウイルスに感染

トム・ハンクスとリタ・ウィルソン夫妻は3月、新作映画の撮影のために滞在していたオーストラリアで新型コロナウイルスに感染したことを公表し、ハリウッドに激震が走りました。それまでコロナは対岸の火事だと思っていたアメリカが、これを機に一気に新型コロナウイルス感染症が身近な恐怖となりました。ハンクス夫妻は共に回復し、その後は治療や研究のために血しょうを提供したり、マスク着用を呼びかけるなど感染予防対策に一役買っています。ハリウッドではその後も、マドンナやイドリス・エルバ、メル・ギブソン、ドウェイン・ジョンソン、ピンクら多くのスターが感染したことを公表しています。

●チャドウィック・ボーズマンさん死去

社会的現象となった大ヒット映画「ブラックパンサー」で主演を務め一躍大スターとなったチャドウィック・ボーズマンさんが、9月に大腸がんにより43歳の若さで他界したこともハリウッドに大きな衝撃を与えました。チャドウィックさんは人知れず4年間にわたって闘病生活を送りながら映画出演を続け、亡くなる直前まで「ブラックパンサー」の続編への出演に意欲を見せていたと伝えられています。

●ニック・コルデロさんが新型コロナウイルスの合併症で死去

ブロードウェーの舞台で活躍したニック・コルデロさんが、3カ月以上にわたる新型コロナウイルスの感染症との闘病の末に7月に41歳という若さで亡くなりました。一時は人工呼吸器を装着されて危険な状態だったコルデロさんは、4月に合併症のために右脚を切断する手術を受けて、わずかながら回復の兆しが見えていると伝えられたものの両肺の損傷が激しく、1歳の息子エルビス君を残してこの世を去ってしまいました。

●「glee/グリー」のサンタナ・ロペス役で知られるナヤ・リヴェラさんが溺死

7月に5歳の息子ジョージ君と共にロサンゼルス(LA)郊外の湖に遊びに出かけたナヤ・リヴェラさんが行方不明となり、捜索開始から5日後に遺体で発見される痛ましい事故が起きました。2人はボートを借りて沖に出て遊泳を楽しんでいましたが、水の流れが速くなったことからリヴェラさんはジョージ君をボートに連れ戻した後、自らは力尽きて湖に沈んでしまったと地元警察は発表しています。

●初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーさんやカーク・ダグラスらレジェンドの相次ぐ逝去

映画「007」シリーズで初めてジェームズ・ボンド役を演じたスコットランド出身のショーン・コネリーさんが、10月に90歳で亡くなりました。家族によるとバハマ諸島の自宅で家族に囲まれて静かに眠りながら息を引き取ったといいます。息子ジェイソンさんによるとコネリーさんはしばらく体調がすぐれなかったとのことですが、妻によると晩年は認知症を患っていたとのこと。また、「OK牧場の決斗」(1957年)や「スパルタカス」(1960年)などで知られる伝説的スター、カーク・ダグラスさんは2月に103歳で死去。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)や「エクソシスト」(1973年)で知られる名優マーク・フォン・シドーさんは3月に90歳で亡くなり、「スター・ウォーズ」シリーズでダース・ベイダー役を演じた英俳優デイブ・プラウズさんは先月、新型コロナウイルスによる合併症により85歳で死去しています。

●ブラッド・ピットとジェニファー・アニストンに復縁説が浮上

2005年に離婚したブラッド・ピットとジェニファー・アニストンが、1月19日に開催されたSAG(全米映画俳優組合)賞の授賞式で15年ぶりとなるツーショットを披露し、復縁説が浮上してファンを喜ばせました。ピットは映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で助演男優賞を受賞し、一方のアニストンもドラマ「ザ・モーニングショー」でドラマ部門の主演女優賞に輝くW受賞となり、2人は舞台裏で再会。お互いの受賞をたたえあい、カメラの前で笑顔で手を取り合い、ハグする様子がキャッチされました。2人はその後も、コロナ禍の9月に豪華スターたちが参加したオンラインのチャリティー企画にそろって参加し、バーチャル共演も果たしています。

●カニエ・ウェストが米大統領選に出馬

トランプ大統領の敗北が決定的となった米大統領選ですが、その裏でラッパーのカニエ・ウェストが、かねてから公言していた通りバースデー党の候補として独立記念日となった7月4日に突如出馬を表明。出足が遅かったところから多くの州で候補者名簿に名前さえ記載されない中、およそ6万票を集めて多くの人を驚かせました。演説中に突然、妻のキム・カーダシアンが長女ノースちゃん(7)を妊娠中に中絶を望んだと涙ながらに語り出すなどメンタル面の不安定さが露呈するなど物議を醸しましたが、本人は早くも4年後の再出馬を目指していると伝えられています。

●ハリウッドにもブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)旋風

ミネソタ州ミネアポリスで5月下旬に黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警察官によって殺害された事件を受け、全米はもとより世界中に広がった人種差別抗議運動ブラック・ライブズ・マターに多くのハリウッドセレブも賛同。ピットやアリアナ・グランデ、ジョン・ボイエガ、マイケル・B・ジョーダン、ビリー・アイリッシュ、ジェニファー・ロペス、カーラ・デルヴィーニュらセレブたちが抗議デモに参加する様子が伝えられています。また、レオナルド・ディカプリオやアンジェリーナ・ジョリーら多くのスターが、人種差別反対運動への支援を表明して全米有色人種地位向上協会(NAACP)などに寄付をしています。

●コロナ禍で映画館が閉鎖、ディズニーは動画配信へ舵取り

パンデミックの影響で3月中旬からLAやニューヨークなど大都市では9カ月以上にわたって映画館は閉鎖されたままで、営業再開のメドは立っていません。そんな中、ハリウッドでは今年公開予定だった「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」や「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」、「トップガン マーヴェリック」など大作のほとんどが来年以降に公開を延期。ウォルト・ディズニーは3月下旬に公開予定だった「ムーラン」を一度は公開延期にしたものの終息が見通せないため、劇場公開を中止してストリーミングでの配信に切り替える措置を取りました。そんなディズニーはコロナ禍で劇場公開が壊滅的なダメージを受ける中、昨年11月からサービスを開始した動画配信サービス「ディズニー+」が好調であることから今後は動画配信作品を重視すると発表し、「ディズニーがストリーミング会社になった」と大騒ぎになりました。また、ワーナー・ブラザースも2021年はコロナ禍での特例として全ての作品を劇場公開と同時にストリーミング配信する決断を下し、映画館の存続危機だと業界内部からも反発の声が上がっています。

●トム・クルーズがコロナ感染対策守れないスタッフに罵声

英ロンドンで「ミッション:インポッシブル」シリーズ第7弾を撮影中のトム・クルーズが、新型コロナウイルスの感染予防ルールを守らず、ソーシャルディスタンスを無視して至近距離で会話するスタッフにブチ切れる音声データーが流出。Fワードを交えながら「次にやったらクビだ!」などと怒鳴る声は世間に大きな衝撃を与えました。その後、再度現場でクルーズが怒鳴ったことが原因で5人のスタッフが辞職したと報じられ、ネット上では賛否両論の声が上がっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)

トム・クルーズ(2018年7月18日撮影)
トム・クルーズ(2018年7月18日撮影)