コロナ禍が続く中、新手のものを含めた特殊詐欺などの一部犯罪が目立っている印象もあり、最新情報を常に押さえておこうという思いから警視庁公式防犯アプリ「DigiPolice(デジポリス)」をスマホに導入してみたところ、特殊詐欺などの犯罪予兆電話、通称「アポ電」発生情報を伝える「アポ電入電中」という速報警告通知が1日に何通も届き、その発生頻度に驚いている。

アプリ「デジポリス」からスマホ宛てに次々くる都内の「アポ電」事案発生通知。登録しているごく一部の地域だけでこの頻度だからもはや他人事ではない(※画像は一部加工しています)
アプリ「デジポリス」からスマホ宛てに次々くる都内の「アポ電」事案発生通知。登録しているごく一部の地域だけでこの頻度だからもはや他人事ではない(※画像は一部加工しています)

同アプリは警視庁犯罪抑止対策本部が運用しており、現在地周辺や、知りたい登録エリアに関する犯罪発生情報などをリアルタイムで通知してくれたり、画面タッチによる防犯ブザー機能や痴漢対策機能などを備えており、警視庁による防犯情報メール「メールけいしちょう」の最新配信も見ることができるから、テレビのニュースにならないような地域的な最新発生事案も、かなり把握できる。

中でも「特殊詐欺入電情報」という設定をオンにしておけば、登録したエリアの所轄署で「アポ電」事案が発生した場合、すぐ「アポ電入電中」という通知がスマホに届き、所轄署名や電話が入った地域、詐欺的な電話の内容などを報告してくれるのだ。

ここでいう「アポ電」(アポイントメント電話の略)とは最近増えている犯行予兆電話のこと。詐欺や強盗グループなどが個人宅に身内や警察官、役所職員、銀行員などを装ってする電話などをさし、資産や保有現金額を聞き出すなどしたり、「アポ」をとってその家に行って現金やカードをだましとるなどの手口が目立つ。最近では、電話後に高齢者らが自宅で襲われて現金などを奪われる凶悪な「アポ電強盗」事件も相次いでいるため、深刻であり、かつ早期の撲滅が求められる事案だ。

筆者は同アプリで都内3つの区を登録してみたのだが、昨日(19日)だけで、確か5件くらいもの「アポ電入電中」通知がきたから、もはやあちこちで起きている印象。ここ何日かさかのぼって見てみると、筆者の自宅近くのエリアにも複数件「アポ電」があったようで、“迫りくる”ような恐怖も感じる。

警視庁犯罪抑止対策本部の公式ツイッターを見てみると例えば、本日(20日)は午後1時までだけの段階で港区東麻布、練馬区小竹町、台東区橋場などで少なくとも計10件もの具体的「アポ電」があったことを同部が確認していることが、一覧表として報告されている。

同部のツイッターでは最近あった「アポ電」犯罪の例も公開されている。最近では例えば、警察官を装った男から「銀行と詐欺グループが結託し、あなたのキャッシュカードを偽造してお金を引き出した。古いカードは交換する」という内容の「アポ電」が個人宅にあり、その家に来訪したニセ警官が「裁断するのでカードを預けて」と促した上、そのカードにハサミで切れ込みを入れて持ち去った件があったという。

また別の例として、これまた警察官を装った男から「お宅へ泥棒に入ったという犯人を逮捕した」という電話があった件も紹介。その男は「犯人は、お宅のお札を偽札に替えたようだ」「あなたが偽札を持っていると犯罪になるので、いったん預かる」などと続け、その個人宅へ。その家の人は自宅に来たニセ警察官に現金を渡してしまったという。

「アポ電入電中」通知や同ツイッターでの報告などを見ていると、最近は、「あなたが持っているのは偽札で、持っていると犯罪になる」という趣旨のことを「アポ電」で告げられ、来たニセ警察官に現金を渡してしまうという「偽札詐欺」や、「あなたが持っているカードは偽造されたものなので預かる」などということを言われ、同様にカードを渡してしまう「偽造カード詐欺」などのパターンがけっこう起きているようだ。

これだけ「アポ電」事案が起きていると、いつ自分がターゲットになってもおかしくない状況と思われるだけに、筆者自身、自宅の一般回線電話に妙な着信がなかったか気になり、先ほど電話機をチェックしてみたのだが、何件か見たことのない番号の着信記録があったことは、あった。

とはいえ最近、スマホ(業務用と私用の計2台)を使った電話はもちろん頻繁にするものの、自宅の一般回線電話機を使った通話をまったくしていなかった。さらに、よく考えたらその電話機が鳴った記憶も全然思い出せない。

自宅の電話機は棚の、床に近い部分の少し奥に置いているだけに、日常的にディスプレーの着信記録すらまったく見ないという事情もある。ただ、いずれにせよ、「春以降在宅時間が増えているのに、全然電話が鳴っていないのもさすがにおかしいか…」と思い、本体をチェックしてみると、あら、着信音設定が「消音」になっていた。ちなみに留守電機能もオフ状態。

少なくとも今年は1回も鳴っていないはずなので、恐らく1年以上、自宅の電話機を「消音」設定状態のまま“放置”していた可能性が濃厚。見たことのない着信番号記録の中にひょっとしたら詐欺的電話が含まれているのかもしれないが、「消音」放置状態のままでは不審な「アポ電」がかかってきても気付きようがなく、「アポ電」犯が筆者宅に何度電話してきてもそもそも通話自体が一切成立しないという、結果論としては“最強”の「アポ電対策」がなされていたとも言えなくもない。

果たして我が自宅の電話にも怪しい「アポ電」がきているのか。確認してみると…(※イメージ写真です)
果たして我が自宅の電話にも怪しい「アポ電」がきているのか。確認してみると…(※イメージ写真です)

とはいえ一応、当該電話機を、久しぶりに着信音が鳴る設定に戻したのだが、もし今後「アポ電」まがいの電話が自宅にきたら「本日『出前館』をすでに2回利用して自宅内にある持ち金がもはや推定375円しか残っておりません。で、何のご用件でしょうか?」(※ちなみに本日の現実的な保有資産状況)などと告げてみようかとは思っている。

【文化社会部・Hデスク】