歌手エルトン・ジョンの半生を描いた作品。ピアノを弾き始めた子供時代、バンド活動を始めた少年時代、スターになっても孤独を感じ続け酒とドラッグに依存するさまなどが、エルトンの楽曲とともにつづられていく。少年時代を振り返るミュージカルシーンや、スターが誕生する瞬間のライブシーンが魅力的。

中でも、エルトン(タロン・エガートン)が、名曲「Your Song(僕の歌は君の歌)」を生み出すシーンはものすごく温かくて、きれいだった。親友で作詞家バーニー(ジェイミー・ベル)から歌詞を受け取り、そのままピアノへ。いろんな音の中に「Your Song」のかけらが聞こえはじめる。形になりはじめたメロディーに耳を澄ませていると、スクリーンの中のバーニーも、エルトンの母も祖母も耳を傾けている。エルトンが曲作りに没頭する幸せな時代を見せてくれた。

ダイアナ元皇太子妃への追悼曲で有名な「キャンドル・イン・ザ・ウインド」などバラードのイメージが強いエルトンだが、70年代の楽曲はロック、カントリーなどジャンルもさまざまでかっこいい。エガートンは吹き替えなしで歌う大熱演。

【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)