「万引き家族」でカンヌ映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督(57)が、文化の違いを超えて“家族”を描いた作品。日仏合作で、主人公の大女優ファビエンヌを演じるのは映画界の至宝カトリーヌ・ドヌーブ(75)。娘役リュミールのジュリエット・ビノシュ(55)に加え、リュミールの夫ハンクを演じるのはイーサン・ホーク(48)。世界的名優が名を連ねる。

本作は「誰も知らない」で是枝監督にほれ込んだビノシュからのオファーに応える形で実現した。構想から8年。15年にあらすじの段階でビノシュに渡したストーリーにはドヌーブとホークの名前があったという。まさに、思い描いた通りの作品と言える。

これまでにさまざまな家族の形を描いてきた。本作では欧米的な個人主義の家族像として、すれ違う大女優の母と脚本家の娘が“演技”を通じて絆を深め、和解へと向かう感情の機微を描いている。

どことなく重さを感じることが多かった是枝監督作品だが、本作には後味の良さがあり、明るさを感じた。

どことなく、ファビエンヌの姿に樹木希林さんが重なって見えたような気がした。【川田和博】

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