ナチスを題材にした映画は多いが、この作品はいろんな意味でユニークだ。

主人公の空想上の友達としてヒトラーが登場し、バックにはビートルズの「抱きしめたい」が流れる。一見無関係の断片を組み合わせたコラージュのような作品は、見終われば不思議な爽快感がある。

第2次大戦下のドイツ。心優しい10歳のジョジョもナチスの教えに従ってユダヤ人は悪魔だと信じている。心が折れそうな時は、友人「アドルフ」が現れて励ましてくれる。だが、ある日亡くなった姉の部屋にユダヤ人の少女がかくまわれていることを知る。明るく振る舞う母はひそかに反ナチスを貫いていて…。

ユダヤ系とマオリ系の間に生まれたタイカ・ワイティティ監督は自らアドルフを演じる皮肉で、子どもから見た大人たちの支離滅裂を印象付ける。少年は賢いユダヤ人少女に心ひかれ、次第に目覚めていく。

しれっと笑いを誘いながら、終戦後の2人のダンスシーンは心揺さぶる。「マイティー・ソー・バトルロイヤル」で見せた監督の力業は健在だ。少年役ローマン・グリフィン・デイビスの好演に「禁じられた遊び」を思い出した。

【相原斎】(このコラムの更新は毎週日曜日です)