都市伝説「カーネル・サンダースの呪い」、東西文化の違いを象徴した「アホ・バカ分布図」。

 関西人が深い愛着を持つABCテレビ「探偵!ナイトスクープ」(金曜午後11時17分=関西地区)は今月、30周年を迎えた。長寿の理由を考えてみた。

 番組は88年3月にスタート。元タレント上岡龍太郎さんからバトンを受け、01年1月から2代目局長に就いたのは俳優西田敏行(70)。日本を代表する名優が局長に就き、もう17年超。すでに「上岡局長」を上回るキャリアだ。

 番組を「僕の心の栄養剤」という西田局長は「バカだね~、いとおしいね~。くだらない話から感動物まで、全部くるまってる番組なんですよね」と、長寿人気の秘密を分析している。

 「どうしても卵をレンジで温めて食べたい」「マネキンに恋をして結婚したい」。実にくだらない視聴者の依頼に、探偵のタレントが大まじめに取り組むのが、番組の真骨頂。そもそも、番組初回のネタは85年の阪神タイガース優勝時、道頓堀川に投げ込まれたカーネル・サンダースを捜索するものだった。

 関西のテレビ界では伝統的な視聴者参加型の手法をとったのが奏功した。探偵に厳しいダメ出しもし、依頼が中途半端に終われば激しく叱責(しっせき)もした初代の上岡局長。バカバカしさと、緊張感が同時に流れ、まさしく「緊張と緩和」の笑いだった。

 番組最大のピンチは、上岡さんの引退にともなう、局長交代だった。それこそ、バカバカしいほど必死になって2代目を取材して回った。関西王道の番組だけに、当然、関西のタレントだと、皆が思っていた。

 ところが、フタをあければ、西田局長の誕生だ。「もともと、西田さんは関西の知人に録画を送ってもらって毎週見るほど、番組のファンだった」と、スタッフに聞かされた。

 福島の出身で、全国区の名優が、まさか大阪を象徴するような“アホな”番組レギュラーに入るとは思ってもみなかった。しかし、これが大成功だった。

 当時を知る番組関係者は「どんな大物芸人でも、絶対的存在だった上岡さんを超えられない。まったく持ち味が違うのに、番組にとけ込んでくれる方としては、西田さんは最高の存在だった」と振り返って話す。

 鋭利な上岡局長に代わった西田局長は、よく泣く。すぐ泣く。毎回、泣く。感動ネタも増えた。その西田局長が、初代と自身の番組の違いを分析している。

 「上岡さんは大人でかわいた笑いを追求したマスター・キートン。僕は、泣きが入ってちょっとウエットで、チャプリン。芸人さんは人前で泣くのは恥ずかしいでしょうけど、僕の場合はその垣根がないから」

 喜劇の2大巨頭をたとえに変遷を表現する。引退後、上岡さんから「西田さんらしいナイトスクープになった」との言葉ももらった。西田局長にとって、何よりもの“ごほうび”だったろう。【村上久美子】