将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(17)が19日に大一番を迎えます。東京・将棋会館で行われる第69期王将戦挑戦者決定リーグの最終戦で広瀬章人竜王(32)戦を制すれば、渡辺明王将(35)への挑戦権を獲得します。勝てば17歳5カ月の最年少タイトル挑戦となり、屋敷伸之九段(47)が持つ史上最年少タイトル挑戦記録(17歳10カ月)を30年ぶりに更新します。大一番を前に藤井七段の地元・愛知県瀬戸市も「その日」を待っています。

瀬戸市中心部にある「せと銀座通り商店街」では、店舗のシャッターにジャンボ将棋盤が張り付けられ、藤井七段の対局時に「大盤解説」が行われています。地元での「大盤解説」は藤井七段(当時四段)がデビュー30連勝を懸けた17年7月の対局から始まりました。発案したのは同商店街で洋品店を営む飯島加奈さん(38)。「大盤解説を始めたときは将棋ブームに乗った、にわか将棋ファンでした。将棋の8大タイトルって? それすらも知らなかった」。

あれから約2年4カ月、飯島さんは、数局を除いて藤井七段の対局を「大盤解説」してきました。

18年朝日杯将棋オープン戦で最年少優勝。今年2月には同棋戦で史上2人目の2連覇。今年2月、名人戦へつながる順位戦C級1組で敗れ、自力昇級の可能性が消滅した戦い。順風満帆だった棋士人生で初めての「つまずき」となった対局も「大盤解説」してきました。今夏、豊島名人らトップ棋士を相手に惜敗を重ねた日々…。

棋譜を並べることで、飯島さんも将棋の楽しさを知りました。「勝手にですけど、悔しい思いもしてきました。藤井さんは、ここにくるまで、たくさんの悔しい思いをしてきたことも知っています。藤井さんの王将戦のタイトル挑戦までの厳しい道程も知っています」。

飯島さんは続けます。

「いまは自信を持って言えます。将棋は指せないですけど、観ることはわかってきました。観るほうも少し成長したかな」

シャッター前の縁台には将棋盤と駒も置かれ、日中は誰でも対局できます。飯島さんは「藤井七段の地元で、みんなが将棋を身近に感じてほしい」。古くからやきものの産地で知られる瀬戸市ですが、将棋の文化も根づいてきました。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)