雪組スター彩風咲奈(あやかぜ・さきな)が、ミュージカル「ハリウッド・ゴシップ」で、野望を胸にのし上がる映画スターを熱演している。すでに神奈川公演を終えた東上主演作は、シアター・ドラマシティ(大阪市)で上演中。私生活ではペットを飼い、仕事とオフの切り替えも習得した。トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)を支えるスターは、公私ともに充実させてセンターに立つ。ドラマシティ公演は31日まで。

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色紙に「のびのびと…」と書き込んだ。「伸び伸びさせていただいているというか。望海さんと真彩、おふたりのクオリティーについていこうとして、気持ちが変わりました」と笑う。

雪組はトップ望海風斗、相手娘役の真彩希帆ともに抜群の歌唱力、技術を誇る当代随一の実力派コンビ。昨年の「ファントム」は圧巻だった。2番手の彩風も技量を磨き、8頭身スタイルに華やかさが増した。

「お客様の期待値の高さを感じ、歌に関しては『ファントム』(出演経験)が大きくて。お芝居でも、望海さんの集中力、パワーがすごくて。私は、もっと大きなパワーで向かっていかないと-と、考えました」

ファントムでは、望海の父親役を演じた。役の幅が広がった近年。苦しんだ先にたどり着いたキーワードが「のびのび」だった。

「以前はお稽古中に『これ言っていいかな』ということが、多かったんですけども…」と照れる。言葉と、取り組みを通して伝える望海の姿勢からリーダーシップも学ぶ。望海が組子に伝えきれなかった言葉を託されることも。「そう、おっしゃってくださることがうれしい」。彩風自身の自覚、覚悟も増す日々だ。

今作は、ハリウッドでの成功を夢見る青年役。オーディションでサクセスを夢見たが、その裏があることを知り、野望を抱く。

「演出の先生から『男の弱さ』も見せてほしいと。夢を追い、大きいことを言っても、チャンスがないと人のせいにしていた彼が、ハリウッドの闇に気づいて変わっていく。最初は『へたれ』。女性の方が我慢強いのか、この『へたれ』が理解しづらかった」

弱みを隠して格好をつける。役の心情に悩んだ。苦しみ、つかんだ役柄は、この2年、望海のもとで学んだ彩風自身にも通じる。東上は2年ぶり2回目。

「前回は新生雪組が誕生するとき。(月組から異動の)朝美(絢)も加わって新しい空気感に包まれ、すごく意気込んでいました」

今は「楽しんで」舞台に立っていられるという。

「ショーだと、自分からどうだ! と見せるより、(演出家から)『もうちょっと脱力した感じで』と言われることが増えた。自分にこんな引き出しも? と、新たな学びもありました」

好循環。雪組一筋で「自分を素直に表現できるメンバー」に囲まれ幸せを感じる。私生活では、前作公演中にフェレット(イタチ科)を飼い始めた。オスで「ジェラルド」と命名した。

「留守中はケージに入れていて、帰ったら出します。いい息抜き。次の日にリフレッシュできる。朝も1時間早く起きたら、いろんなことができる。お稽古も(退出)時間を決め、次の日に早起きして劇団へ。ペット効果ですね。自分自身に戻る時間ができた」

張り詰めた糸のようだった心に“あそび”ができた。心身ともにしなやかに、男役道もより一層、磨きがかかる。【村上久美子】

◆ミュージカル・スクリーン「ハリウッド・ゴシップ」(作・演出=田渕大輔) 1920年代のハリウッドが舞台。映画スターを志すコンラッド(彩風咲奈)は、新人発掘をうたう大作映画のスクリーンテストに臨む。だが、若手スターのジェリー・クロフォード(彩凪翔)が主演に選ばれ、裏を知る。怒ったコンラッドはスタジオへ乗り込み、往年の大女優アマンダ(梨花ますみ)に見いだされる。アマンダは、自らを踏み台にして出世したかつての恋人ジェリーへの報復を考えていた。コンラッドはその最中、ジェリーの新たな相手とうわさされるエステラ(潤花)に出会う。

☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛県大洲市生まれ。07年に首席入団。雪組配属。新人主演は5回。長身で脚長、小顔と抜群のスタイルも注目。11年、宝塚バウホール「灼熱の彼方」で彩凪翔とダブル主演。14年「パルムの僧院」でバウ単独初主演。17年「CAPTAIN NEMO」で東上初主演。身長173センチ。愛称「さき」。