12月1日に開局する「NHK BS8K」で世界で初めて8K放送される映画「2001年宇宙の旅」を試写した。8K並みのクオリティーを持つ70ミリフィルムで撮影されながら、ポテンシャルを発揮できる場がほぼなくなっていた同作。8Kでよみがえった本来の映像は、宇宙船の細かなディテールまでよく見え、クリアな色彩も想像以上だった。8Kなんて必要ないと思っていたけれど、美しさと臨場感は圧倒的だった。

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「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company
「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

試写会は今月7日、300インチのスクリーンを持つNHK内の試写室で行われた。液晶モニターではないのでテレビの見え方とはちょっと違うが、通信やAV機器の専門メディアの記者たちは「思ったよりすごい」と感想を語り合っていて、堪能したようだ。

8Kの解像度は一般的なハイビジョンテレビ(2K)の16倍。漆黒の宇宙空間や、謎の物体モノリスの質感など、臨場感が格段に違う印象だ。木星探査に向かう宇宙船ディスカバリー号の細かなディテールには息をのむ。ただでさえ緻密な外観は、ぼやけたりにじんだり暗かったりした細部までくっきりと見えて、ダクトのデザインまで伝わってきた。コクピットも、さまざまなパネルの細かな表示がよく分かるので、作品もファンは楽しいかも。

ディスカバリー号の人工知能HAL9000も、赤がはっきりして、奥まで見えて迫力がある。終盤のロココ調の部屋では、クリーム色だと思っていた壁に微妙な色が入っていたり、何を食べているのかよく分からなかった黄色いものがあの料理かと分かったり。スターゲートに突入する極彩色の場面は、8Kの最も得意とするところで圧巻だった。

「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company
「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

「2001年宇宙の旅」は、50年前の1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督のSF超大作。当時35ミリフィルムが主流だった映画界において、最高クオリティーの70ミリフィルムで撮影された作品だ。4Kを超える情報量を有し、8K並みのクオリティーを持つが、70ミリで上映できる環境は非常に限られ、本来のポテンシャルで見る機会はほぼなくなっている。

NHK編成局の坂本朋彦チーフ・プロデューサーによると、同作の世界初の8K放送は、作品を管理しているワーナー・ブラザースにNHKが呼び掛けて実現した。ワーナー側が専門チームにフィルムの修復と8Kスキャンを依頼。約1年かけて本来の映像が8Kで再現された。

「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company
「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

坂本氏は「ネガにあるものを大事にするキューブリック監督の意図を何よりも優先し、監督が意図したもの以上でも、以下でもない、劇場公開時に近いものになるように作業が行われました」。作業チームも、8K版の臨場感に息をのんだという。「監督の美学が、細部にまでデザインされて構築されているのがよく分かる。CGもない50年前の作品なのに、まったく古びていない。キューブリックが撮ったものがどれだけすごいかが分かったのも8Kならでは」と話す。

放送は、「BS8K」で12月1日午後1時10分から。8Kテレビや対応チューナー、アンテナが必要で、自宅で視聴できる人はごく一部であるのが現状だ。見るには、各地域のNHKや、8Kテレビをデモする家電量販店に足を運ぶのが現実的なようだ。試写はスクリーンだったので「より解像度を体感できる」という液晶も、当日どこかでちょっと見たい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)