8月4~6日、東京・台場地区で開催された女性アイドルの音楽フェス「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」は、大盛況で幕を閉じた。夏の恒例イベントとなったTIFには今年、アイドル223組、1480人が集い、イベント史上最多の8万1378人を動員。「ブームは下火」と言われることもあるが、とんでもない。乃木坂46、欅坂46の坂道シリーズのブレークも手伝って、アイドルファン人口とエネルギーは逆に増していた。もはやアイドルは一過性のブームではなく、文化として定着するのでは-そう確信したほどだった。

 イベントでは、ビッグネーム2組の「新人」の対照的なステージが印象に残った。AKB48は、昨年のチーム8に続いての出場。今年はチーム8に加え、昨年12月にお披露目された16期生が2度、ステージに立った。選抜に入るような有名メンバーはもちろんいないが、中学1年の鈴木くるみ(12)同2年の佐藤美波(14)ら、中高生を中心に、平均年齢15・2歳の18人が、白、水色の清潔感あふれる衣装で初々しく踊った。

 AKBの看板をもってしても、この日はメインステージに登場することはなかった。それでも、「フライングゲット」「ポニーテールとシュシュ」など、ファン以外にもなじみのある曲も多く披露。遠巻きなら、入場券がなくても外から見られるスマイルガーデンでのミニライブでは、多くのアイドルファンが足を止めていた。楽曲の持つ力は強かった。

 16期生は1月に単独コンサートを開催し、7月にはオリジナルの曲目による劇場公演も始まった。「恵まれている」という声も聞かれるが、実は大きな不利を抱えている。先輩からのサポートをあまり得られていないことだ。16期生は先輩チームと絡むことがあまりなく、独立した育成体制をとっている。これまでの研究生は、正規チームのバックダンサーやアンダー(代役)として公演に出て、先輩の見よう見まねで経験を積んで成長していく。ところが、16期にその機会は少ない。そのため、いまだに基本的なステップもおぼつかないメンバーがいたり、トークに微妙な間が生まれたりもする。ものすごく成長が遅く感じるのだ。もちろん、成長の過程を見守るのがアイドルのおもしろさだから、誘惑に目もくれず、ゆっくりとでも着実に進んでいるなら、きっとファンは見ているはずだ。

 一方、6日の最終日でトリを飾ったのは、乃木坂46だった。こちらも、白石麻衣や西野七瀬ら人気メンバーではなく(途中からサプライズ登場はしたが)、メインでパフォーマンスしたのは3期生の12人だった。山下美月(18)与田祐希(17)ら、ルックスの良さはさすがに安心の乃木坂ブランドを感じさせる。しかも、与田と大園桃子(17)は、最新シングル「逃げ水」でなんとダブルセンターを務める。期待の高さをうかがわせる、驚異の世代だ。

 昨年9月にお披露目され、活動は1年未満だが、この日の鬼気迫るパフォーマンスは、キャリア不足を感じさせなかった。AKB48のように、常設劇場もなく、ステージに立つ機会は限られているが、1つ1つのステージを大切にして活動していることが伝わってきた。満員のメインステージでも、堂々たる立ち回りだった。

 老舗のAKB48と、新興勢力の乃木坂の新世代同士が、こうした形で相まみえたのは興味深い。記事からも伝わる通り、現時点の完成度は乃木坂3期の圧勝だ。だが、どちらにも不利はある。完成度の差は、その壁に真っ向から挑んでいる最中のAKBと、1球入魂の決意でプラスに変えている乃木坂の差とも思える。ウサギの乃木坂を、カメのAKBが追い越す時は来るのか? 次世代争いを、そんな視点で見るのも楽しい。