テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」で、市原悦子(82)とのコンビで語り手を務めた俳優常田富士男(ときた・ふじお)さんが18日午後、脳内出血のため、都内の病院で亡くなった。81歳だった。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は長男青児(せいじ)さん。今年2月に脳出血で倒れ、入院していた。

 常田さんは3年前に脳出血で倒れた。その時は懸命なリハビリで日常生活に差し支えないほどに回復。昨年7月には自宅のある西東京市で、恒例の「民話の世界」の講演会をいつものゆったりとした口調で1時間弱も行った。

 しかし、今年2月に再び脳出血で倒れ、そのまま入院した。会話はできなかったものの、安定した状態が続いたが、18日に容体が悪化。妻ヤス子さん(81)、元俳優の長男青児さん(58)夫婦、そして孫(37)の4人にみとられ、息を引き取った。孫は「九州生まれなので厳しくもあり、優しくて尊敬できる祖父でした」と話した。

 常田さんは熊本市の済々黌高校を卒業後、劇団民芸の養成所に入所した。NHK大河ドラマ「源義経」や日本テレビ系のバラエティー番組「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」などでとぼけた風貌と独特の口調で注目された。映画は黒沢明監督「赤ひげ」、今村昌平監督「楢山節考」「うなぎ」のほか、ジブリ映画「天空の城ラピュタ」にポムじい役で出演した。

 75年からはTBS系アニメ番組「まんが日本昔ばなし」で市原と2人ですべての登場人物の語り手を務めた。「むかーし、むかしのことじゃったぁ」の温かな語り口で親しまれ、94年まで20年も続いた。

 77年には「まごころの政治」を掲げて保谷市(現西東京市)市長選に立候補。中村敦夫の応援を受けたが、落選した。晩年は民話の講演で全国を回った。最後の出演作は14年に村の老人を演じた河瀬直美監督「2つ目の窓」、最後の仕事は昨年7月の「民話の世界」だった。

 ◆常田富士男(ときた・ふじお)1937年(昭12)1月30日、長野県生まれ。その後、熊本県に移り、済々黌高定時制に通う。卒業後、劇団民芸の養成所に入所し、59年に米倉斉加年さんと劇団青芸を結成(その後解散)した。独特の風貌で映画、ドラマなどで活躍。20年続いたテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」終了後も、民話の語りをライフワークにしていた。

 ◆「まんが日本昔ばなし」 制作は毎日放送。75年1月から3月まで、西日本は毎日放送系列、東日本はテレビ朝日放送系列で放送。76年1月から94年9月まではTBS系列で放送。その後は再放送が流され、CS放送などでも再放送されている。