美輪明宏(84)の秋恒例のコンサート「美輪明宏の世界~愛の話とシャンソンと」(23日まで)が7日から東京・池袋の東京芸術劇場で始まる。

コンサート本番を前に、美輪から長いメッセージが届いた。「とてもつらいニュースに触れることが多いですよね。国内の事件にしても、国交問題にしても、トランプ大統領の発言にしても。ネットでも、荒れた言葉を吐き出している人が増えているようです。現在の経済状況や社会問題の中で生きるためには、思いの丈を話すことだって必要だと思います。心身に1番悪いのは、ため込んでしまうこと。ですから、思っていることをしゃべって発散する方がいいわけです」。

過激な言葉の氾らんに警鐘を鳴らす中で、意外な宣言が飛び出した。「『バカ死ねキモイ』という汚い言葉をそのまま言ったり、SNSに書き込んだりすると、人間関係や社会問題を深刻化させてしまうだけ。そこで私、一生懸命に考えてみました。現代に生きる人間たち、世界を救える言葉はないだろうかと。それは『ルンルン』です。会話の途中でも最後にでも、とにかく『ルンルン』を言えばいいのです。『お帰りなさい ルンルン』『ご機嫌よう ルンルン』とかね。すると思わず、疲れた心がふっと楽になって、言った方も、言われた方も、気持ちが明るくなると思いませんか」。

今、「ルンルン」を提唱する理由も明かした。「昔から楽しい気分を表すのに使っていましたよね。『ルンルン気分』だったり。でも最近は使われていないことに気がついたんです。40代、50代の方々が年金問題や健康などの悩みが山積して、とても疲弊していらっしゃる。それで、もっともっと広めていこうと思ったのです。日常生活はもちろん、首脳会談のような場でも使ってみたら、いろいろな問題が丸くおさまる気がするのです。輸入問題でも、『うちの産物を買ってください ルンルン』って。マイナスな出来事や深刻な発言につけると、言う方も聞く方も、ふっと気持ちが軽くなるでしょ。極端だけど、お葬式でも『このたびはご愁傷様でした ルンルン』って言えばいいんです。『バカにしてるのか!』って怒られたら、『だって、天国へいらしたんでしょう? よかったですね ルンルン』と前向きに返せばいいのです。おじさまたちも『そうじゃないだろ、バカ野郎! ルンルン』『うるせぇ、あんたに言われたくない ルンルン』、親子の久しぶりのLINEでも『元気にしてるか? ルンルン』『余計なお世話だ、放っておいてくれ ルンルン』ってね。本心をぶつけ合っても、ソフトな印象を受けるから、気分が上がると思いませんか。愛情だって湧いてくるような気がするでしょう」。

今回のコンサートもシャンソンが中心となる。「2年前、シャンソンばかりのコンサートをお贈りしましたら、とても評判が良くて、若い人たちから『初めてシャンソンを聴いて、感激しました』というお手紙をたくさん頂戴したんです。それで、今年もシャンソンの名曲の数々を歌うことにいたしました。シャンソンは、1曲に1人の人間の愛のドラマが描かれていることが多いのですが、その人には相手がいるわけだから、2人分の芝居を1曲に込めなくてはいけないんです。その人の精神状態から、相手はどういうタイプなのか、何時ごろ別れて、そのときの街の灯りはどうだったか。その季節ならどれくらいの温度で、風はどう吹いていたのか。そういう情景まですべて自分の中で作り上げて歌わなければいけない。私のコンサートにいらした方はよく、『映画を何本も観たような感覚です』と仰るけど、とんでもない。こちらはお芝居を何本も立て続けに上演しているほど、気力も体力も必要になります。だから、1曲1曲が真剣勝負。幕が下りた時の達成感たるや、ようやく責務を果たせたと倒れ込むように楽屋へ戻ります」

60年以上も歌っているが、歌声は変わらない。「不思議なことに長年、音域も声量も変わらないのです。そのために私の体の中は戦闘状態。お客さまには分からないように、何てことない顔をして歌っているけれど、登場人物たちの精神状態から複雑な事情から情景まで、何から何までを自分の体に流し込んで、肉体と心に指令を送って、力をキープしながら1曲を歌い上げるわけですから。私、もう84歳ですからね。足腰も弱ってきているし、今までもったのが不思議なくらい。ひょっとしたら、今年のコンサートが最後になるかもしれない。あ、こういう時にこそ、使わなくちゃね、ルンルン」。

コンサートは7、8、10、12、14、15、17、19、21、22、23日の全11回を予定している。