三谷幸喜監督が心がける「浮いた感じ」次回作は未定

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

三谷幸喜監督(58)の新作「記憶にございません!」が13日に公開され、多くの観客が詰めかけた。

監督作品10本目。近年の作品はややシュールな方に振れ、前作「ギャラクシー街道」(15年)の翔(と)んだ描写には、正直ちょっとついて行けなかったところがあった。興行成績ももうひとつだった。

今回は「総理大臣の記憶喪失」と題材を現実に寄せ、同年代の盟友、中井貴一(57)を主演に迎えて、本来の三谷流笑いを取り戻したように思える。

公開前に監督を取材する機会があり、題材の選択について率直に聞いてみた。

「日本映画って、ドラマやもっと言えば小説もそうじゃないかと思うんですけど、基本はリアリズムの世界ですよね。その中で僕の居場所っていうのが、そこからちょっと浮いた感じのシチュエーションにある世界みたいなもので、それを作るのが僕の役目かなあ、と思っているんです。このちょっと浮いた感じが、どのくらい浮いたら限界なのかと探っている中で、幽霊(ステキな金縛り)とか港町のギャング(ザ・マジックアワー)とか、そのくらいまではあれだった(受け入れられた)んですけど、これが宇宙人(ギャラクシー街道)までくると無理だったんだ、と。その辺から考えて今回はファンタジーとしての『政界』をやってみたということですね」

試写会には安倍総理も訪れた。予想もしなかったことだが、総理が「図星」を指された描写もあったそうだ。

「1カ所だけ『おっ!』となった瞬間があったそうなんです。どこなんですか? とくらいついたんですけど、教えてもらえませんでしたねえ。僕は誰かを批判したり、政治にもの言おうと作っているわけではないし、安倍総理が引っ掛かったとしても、それは勝手に引っ掛かっただけで、全然そんなつもりでやったわけではないんですけどね」

リアルな描写からの浮き具合では、「夜のニュースキャスター」にふんした有働由美子さんのどぎついメークが印象的だった。

「実際に夜のニュースをやられているので、そのまま出てきたら『news zero』になってしまう。全然違うキャラクターに行きたいなと思い、アメリカのニュース番組にときどきいる無駄に妖艶な人が昔から気になっていたので、あれで行こうと(笑い)。いや、有働さんは基本的には色っぽい方だと思うんですけどね」

次回作はまだ決めていないという。

「国民の皆さんとの(リアリズムからの距離の)『探り合い』の中で、いろいろ考えているところです」

その手探りの次なる落としどころはどこになるのか。今から楽しみだ。【相原斎】