TBSを9月9日付で退社し、フリーに転身した林みなほアナウンサー(29)を取材した9月11日のイベントは、少し不思議な現場であったと同時に、林アナの心意気を感じる場でもあった。

林アナは、スタイリスト小山田早織さんの書籍「もう通勤服に悩まない」(講談社)発売記念トークショーのMCを担当した。小山田さんのファッション雑誌「with」連載の書籍化。小山田さんが番組衣装などを担当した縁で知り合い、林アナはTBS在籍時に、同連載初回のモデルも務めた。

ただ、イベント告知には「林みなほアナウンサー」とだけ書かれ、TBSの文字はなし。本人も冒頭あいさつで「アナウンサーの林みなほです」とだけ自己紹介した。

取材相手がどこの所属、立場かということは、発言の持つ意味などが変わったり、一般人扱いになっている場合の配慮が必要だったり、活動に支障をきたす原因になったりもするので、確認は避けて通れない事項となる。

イベント後、林アナが壇上から外れたので、同様に取材していたマスコミ数社と、所属を確認した。林アナは「アナウンサーという肩書で大丈夫ですか?」という質問には、「大丈夫です」と答えたが、一部で伝えられたTBS広報室への異動については「異動はしてないです」と否定。

アナウンス室所属かどうか、という確認をしばし続けたが、明快な答えはないまま「あらためてお話しさせていただく形でも大丈夫ですか」とコメントした。TBSか再確認すると、「ではないですね」と答え、休職中であることも否定。「元TBSアナウンサーでいかがでしょう。ふわっとしていてすみません」と、最初の問答では、懸案が解決しないままだった。

ここで林アナは、「ちょっと待ってもらっていいですか」と、いったん控室へ消えた。関係者と電話などで打ち合わせに行ったようにも思われたが、控室には別の出口も。もしそれ以上の発言を拒むのであれば、そのまま立ち去ることもできる状況だった。

しかし林アナは約10分後、報道陣の前に1人で戻ってきて、「元TBSアナウンサーで大丈夫です」と明言。ただ、「元」だと現在は何か、という疑問もわいてくる。その点を報道陣が伝えると、林アナは理解を示した様子で、「退社しています」と認めた。

あくまで印象だが、この日は退社報告についてはもともと、しっかりと準備していなかったのかもしれない。ただ、その中で、義理のある小山田さんのイベントはサポートしたい、という心意気で出席したのではないかとも推察された。林アナは、「全然私に触れないで、早織さんに触れていただくというのはいかがでしょう」と小山田さんを気遣う場面もあった。

その後、林アナは再び離れて関係者と電話。また戻ってきて、今後の所属事務所などについては「まだこれから。あらためてちゃんと、公表させて頂ければ」と話した。今後の活動について「アナウンサーにこだわらないで、幅広く活動していきたい」と最後まで、1人で応対した。

正直、報道陣と林アナの意志が、完全に歩みよる取材とはならなかったかもしれない。ただ、立ち去る機会が2度あったのを、1人で戻り、ギリギリの状況で答えようとした林アナの心意気には、感じるものがあった。フリーとなり、今後の活躍を期待したい。【大井義明】