ウィレム・デフォー(64)がゴッホを演じた「永遠の門 ゴッホが見た未来」が11月8日から公開される。先日デフォーとジュリアン・シュナーベル監督(67)が来日して、都内でプレミア試写会が開かれ、2人のファンというリリー・フランキー(55)がゲストとして招かれた。

「おふたりの視線を通してゴッホを知ると『ひまわり』も違って見える」とリリーは感激の面持ちだったが、むしろ驚かされたのは2人がリリーのことをよく知っていたことだ。

リリーが出演した「万引き家族」は昨年の仏カンヌ映画祭で最高賞のパルム・ドールに輝いている。国際的評価の高い是枝裕和監督の作品には、これまでも「そして父になる」(13年)に出演していて、こちらも国際的な映画祭に縁のあるシュナーベル監督とデフォーは、リリーを名作にしばしば顔を出す「著名俳優」として認識していたわけだ。

シュナーベル監督が「万引き-」を引き合いに出し、「本当に素晴らしい演技で深い映画だった」と絶賛するひと幕もあった。リリーは当惑するばかりだったが、「映画が言語や国境の壁を越える」を実感させるまれな出来事でもあったと思う。

言葉では「海を越える」と言っても、ハリウッド大作をのぞけば、欧州や日本の作品は他国では小規模のアート系シアターでの上映に限られてしまうことがほとんどで、一般的な認知度は決して高くないからだ。

是枝監督がカトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ピノシュを迎えて撮った「真実」(公開中)は、フランスでは大作がそろうクリスマス・シーズンに公開されるという。「永遠の門-」のプレミアでの出来事はその予兆のようなものだったのかもしれない。【相原斎】