中島みゆきの「時代」は、別れと出会いの繰り返しを輪廻(りんね)に重ねて歌っているが、最近、その「めぐりめぐる」時代の流れを実感させる話を聞く機会があった。

73歳になった堺正章は1年ぶりのライブで、グループサウンズ時代をほうふつとさせる若々しい歌声を披露した。その会場が数日前に渡辺謙の還暦パーティーが行われた「ブルーノート東京」だったこともあって、公演前の取材では、この13歳下の「後輩」への畏敬の思いも明かした。

「謙さんは先駆者だよね。度胸のある人。単身ハリウッドやブロードウェーの一線に立ったんだもの。彼の後を追い掛けようという人はいるけど、彼の前には誰もいなかった。そういう意味ではすごい人だよ」

同系列の芸能事務所に所属していることもあって縁も感じている。「謙さんの立ち位置は昔でいえば早川雪洲だよね」と映画草創期のハリウッドで活躍した歴史上の俳優の名前を挙げた。

早川は1907年(明40)に単身渡米。米映画界で主演俳優として文字通りのトップスターとなった最初のアジア系俳優だ。「それでね。実はその雪洲さんの弟子だったのが僕の父親(人気コメディアンだった堺駿二)なんですよ。不思議だよね。こうやって謙さんと雪洲さんを重ねて見ていると、巡り合わせのようなものを感じるんですよね」としみじみした表情になった。

先日上演された「スター・ウォーズ歌舞伎」で、長男の勸玄くん(6)と共演した市川海老蔵(42)の話にも「巡り合わせ」があった。「スター・ウォーズ」の第1作公開年に生まれた海老蔵はシリーズの大ファン。同じく「宇宙好き」の父團十郎さんに連れられて映画館でこの映画を見たのがきっかけと言う。

海老蔵の趣味としてDVDがそろえられた自宅でシリーズの映像に親しんだ勸玄くんもシリーズに夢中だそうで、今回の上演会でも人気ドロイド「C-3PO」との共演に興奮気味だった。シリーズで一貫して描かれる親と子、師と弟子の関係が歌舞伎の世界にフィットしているのかもしれない。3代にわたるSWファンも珍しいが、時は真っすぐ流れるだけではない。

海老蔵によると「不思議なんですけど、勸玄は最近のものより昔の映像(旧シリーズ)の方が好きなんですよ」。技術革新で精度の上がった新作より、祖父と父が40年前にとりこになった旧作の方に引かれるというから、まさに「めぐりめぐる」である。

子役時代から数えれば堺の芸歴は70年近い。市川家には親子3代の「時間」が、そして歌舞伎の伝統が流れている。まさに「時代」が生んだ巡り合わせである。それにしても、あの名曲を中島みゆきが発表したのは20代前半。その早熟に改めて驚かされる。【相原斎】