1950年代末から60年代にフランスで起きた、映画のムーブメント「ヌーベルバーグ」を代表する女優アンナ・カリーナさんが14日、パリの病院で亡くなった。79歳だった。代理人がAFP通信に「ガンで亡くなった」と明らかにした。

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昨年9月、カリーナさんにインタビューする機会に恵まれた。時差ぼけで睡眠不足だと言いつつも終始、笑顔のカリーナさんに、楽しく生きる秘訣(ひけつ)を尋ねると「目の化粧はアイデンティティー」と即答した。全盛期から半世紀が経過した今も、ファッションや芸術のアイコンであり続けるカリーナさんのチャームポイントこそ、アイラインをしっかり入れた瞳。70代後半になっても乙女心とプライドは健在だった。

インタビュー中「顔を見て…正直、年取っているでしょ」と問いかけられた。「『気狂いピエロ』の時の、雰囲気のままですよ」と答えると「若い子が私のことを知ってくれているのも日本ならではよ」と言い、別れ際にキスしてくれた。

「いろいろな役を生きて人の何倍も経験ができた」と語るカリーナさんが、今の夢だと明かしたのが「絶対にピエロを演じること」。その言葉が1年後にかなわなくなるとは夢にも思わなかった。【村上幸将】