映画「渡り鳥」シリーズ「拳銃無頼帖」シリーズなど、数々のシリーズもの映画で人気を博した俳優宍戸錠さんが東京都世田谷区の自宅で亡くなったことが21日、分かった。86歳だった。

   ◇   ◇   ◇

日活全盛期の一角を支えながら、自ら「B級だった」と振り返る人だった。

「チャンユー(石原裕次郎さん)みたいにいるだけでスターになれるヤツと違って、おれみたいなのにはいつもA級になってやるという気概が必要だ。もともとB級なんだよ」。近年そんな話を聞いた。

器用に役柄を演じ分けられるタイプではなかったので、デビュー直後に米俳優オーソン・ウェルズをイメージしてほおの手術を受けたり、大好きだった海外ミステリーをヒントにしながら試行錯誤の末に「エースの錠」のキャラクターを創り上げた。本人にすれば、A級に成り上がろうとする気概の一端だったのだろう。映画全盛期が去ると、「元祖どっきりカメラ」などバラエティーにも活動の場を広げ、堂々と存在感を示した。これもB級の気概があったからこそだろう。

私生活では、長女の史絵さんが小学生の頃、毎年クリスマス・シーズンにクラスメートを自宅に招き、サンタクロース姿でもてなした。級友たちは「宍戸錠」を知らなかったが、膨らんだほおには白ひげが似合っていたという。

後年、さまざまな行き違いから子どもたちとの確執が伝えられたが、宍戸さんなりの努力の様子はそんなエピソードからもうかがえる。公私ともに不器用な努力の積み重ねが、他には替えられない個性を支えていたのだと思う。【相原斎】

◆日本テレビ系「元祖どっきりカメラ」(74年~89年) 70年に「どっきりカメラ」シリーズが誕生。74年から「木曜スペシャル」で3カ月に1度の単発番組として放送。宍戸さんと石川牧子アナが司会。仕掛けをして人を引っかけ、野呂圭介が「どっきり」のプラカードを持って現れネタばらしをして笑いに変えるのを隠しカメラで撮影。スタッフから萩原敏雄元社長、小杉善信現社長と日テレ社長が2人誕生。