シンガー・ソングライターの佐野元春(63)が26日、都内で、公開中の映画「コンプリシティ/優しい共犯」のトークイベントに出席した。同作でメガホンをとった近浦啓監督(42)が、佐野の映像作品を多く手がけてきた縁もあり、トークイベントが実現。佐野は近浦監督について「多くの映画監督と仕事をしてきましたが、音楽を理解しているタイプと、映像で引っ張っていくタイプ。近浦監督は珍しくて、両方ある」と話した。

本作は技能実習の現場から抜け出して他人になりすます中国人青年と彼を受け入れるそば職人の物語だ。近浦監督は初の長編映画となったが、佐野は「第1作目ということで、率直におめでとうございます。この映画が撮っている主題は社会的なイッシュー。ドキュメンタリーで描きがちなテーマ。それが映画として成立しているところに感動しました。映画の可能性を感じました」と絶賛した。

トークイベントでは、佐野が主導で近浦監督にキャスティングや、ラストシーン、影響を受けた映画など質問攻め。途中からは司会者いらずで2人で話しまくった。

佐野も映画に影響を受けてきたという。「10代の多感な頃から表現することが好き。詩を書いたり、曲を書いたり。音楽を聴くのと同じように映画を観た。新宿の単館映画館によく行って観た。ヌーベルバーグの時代ですね」と話した。

近浦監督に「佐野さんを題材に映画を撮りたい」と言われると、「大変光栄ですね。ぼくが役をやるとしたら、憧れがあって、アウトローをやりたい。冷酷なアウトローを。そういうシナリオを書いたらよろしくお願いします」と意外な願望を明かし、観客を驚かせた。

トロント国際映画祭やベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭、グラスゴー国際映画祭に正式に出品され、東京フィルメックスでは観客賞を受賞した注目作。映画は全国で順次公開中。