新型コロナウイルスの感染が拡大した世界各国において、感染防止を徹底する一方、外出や営業の自粛継続で停滞した経済活動を再開させようという、新たな課題に取り組む動きが出てきている。テレワークやソーシャルディスタンス、マスクの日常的な着用などの“新しい生活様式”が各国で実施され、徹底が呼びかけられているのも、その表れだ。

映画や演劇、ライブなどのエンターテインメントも変化を余儀なくされることは必至だ。河瀬直美監督(50)が23日夜(日本時間)、日本で初開催した国連教育科学文化機関(ユネスコ)が呼びかける世界的なオンラインディベート(討論)シリーズ「レジリアート」の中でも、ポストコロナのエンターテインメントのありかたに議論が及んだ。

パネリストの別所哲也(54)は「これまでの演劇的な劇場を使ったやり方は、この数年間は非常に大変なことになる。主たるステージもインターネット上に移り変わっていく」と、ライブが配信に変わっていくとの見通しを示した。その上で「舞台俳優なので、拍手したり呼吸する醍醐味(だいごみ)は貴重なんだけど(生の舞台は)限りない希少な高級なものとして残らざるを得ないかも知れない」と語った。

ギタリストMIYAVI(38)も「ポストコロナで、完全に世界が変わっていく。マーケットが変わる。コンテンツそのものは変わらないけれど、僕たちが表現する場所も、寂しいことなんだけれども変わっていく」とライブの開催が難しくなると語った。その上で「どんどん、非物質化する過程の中で、どうアーティストとして存在していくか。僕らが変わっていかないといけない。おんぶに抱っこで生きていける状況ではないと思う」と訴えた。

一方で、前日22日夜にTOKYO FMで放送された「村上RADIO ステイホームスペシャル~明るいあしたを迎えるための音楽~」で、作家の村上春樹氏(71)はリスナーの質問に答える形で、ポストコロナ時代について私見を披露。「自粛期間のせいで、僕らの生活にとってなくてはならないもの、なくても困らないものは何かが、少しずつ見えてきたんじゃないかなという気がします」と指摘した。その上で、今回のコロナ禍を「壮大な社会的実験みたいなものが世界規模で行われたのではないか。実験の成果は、じわじわ社会に広がっていく気がする」と語った。

そして「これまでの生活を改めて見直すのは多分良いこと。逆に怖いのは、自分が良ければ、それでいいみたいな感じで人々が閉塞(へいそく)的になること。グローバリズムが後退し、自分の国や地域だけで閉じこもるのは怖いかも知れない」とも語った。

変わっていくもの、変わらざるを得ないものは間違いなくある一方で、変わらなくていいものもある。変化を的確に…そして本質とは何かを伝える…それがポストコロナ時代の記者に求められていることだろう。