俳優柄本明(71)が、1993年(平5)から上演を続けてきた、ひとり芝居「煙草の害について」を、オンライン型演劇場にリニューアルした東京・浅草九劇で6月5、6日に上演し、有料配信することが27日、分かった。

76年に劇団東京乾電池を結成し、座長を務める柄本にとって、オンラインでの舞台上演は初挑戦。18年の主演舞台「誰もいない国」以来、2年ぶりの舞台出演となる。

柄本は「演劇人としてまた俳優として、何かやらなければと考えていたところ浅草九劇から声をかけていただきました。よろしくお願いします」とコメントした。新型コロナウイルスの猛威は演劇界、芸能界をも直撃し、演劇やライブが中止・延期を余儀なくされ、新たな公演を発表することも難しい状況だ。柄本は、公演を配信で展開しようという製作者をサポートしようとリニューアルされた、浅草九劇の第1弾公演に選ばれたことに感謝した。

「煙草の害について」は、ロシアの劇作家アントン・チェーホフの戯曲で、柄本が93年に初めてのひとり芝居の試みとして自ら構成、演出、上演した。劇団東京乾電池は、チェーホフの4大戯曲「かもめ」「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」「桜の園」を、柄本の演出で上演した経緯があり、柄本は上演時間20分程度の短編の「煙草の害について」に、他のチェーホフ作品のエッセンスや時事ネタを交えるなどして約1時間のひとり芝居を作り上げた。

柄本版「煙草の害について」は、ユーモアとナンセンスと人間味があふれる作風が各所で話題を呼び、全国で相次いで上演された。03年6月には、チェーホフの母国ロシアでも首都モスクワ、サンクトペテルブルク、サマラ、オムスクで上演。17年4月に劇団東京乾電池が「創立40周年+1公演」として東京・明治座で初めて公演を開いた際も演目の1つになった。

17年以来3年ぶりの上演となる今回は、オンライン上演の特性を生かした、カメラワークが見どころになりそうだ。浅草九劇は、リニューアルに際して6台のカメラ、画面の切り替えなどを行うスイッチャー、ディスプレーなどの機材を新たに導入。複数のカメラの中で最もふさわしい映像に切り替えることで、柄本自身の表情や動きなどを、実際に劇場に足を運んだような感覚を得られるような形で観客に届けるべく、準備が進められているという。

公演は動画プラットフォーム「Vimeo(ビメオ)」で、6月5日午後7時半、6日は午後2時開演で有料配信される。料金は2000円で、28日午前6時から電子チケットの販売プラットフォーム「PassMarket(パスマーケット)」を通じて販売する。【村上幸将】