8月31日にオスカープロモーションを退社し、フリーとなって初めて公の場に現れた剛力彩芽(28)の姿に、1つの覚悟を見た思いだった。剛力は、16日に都内の明治神宮会館で開催された、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」オープニングセレモニーに登壇した。同映画祭が、日本人監督を応援すべく始動する「クリエイターズ支援プロジェクト」に賛同し、企画段階から参画した3本の短編映画に主演。その予告編が初公開された。

セレモニーが始まる30分ほど前の午後4時頃、剛力が関係者席に姿を見せ、記者席に近い端の席に座った。剛力はステージと、その上のスクリーンに流れる映像を、ずっと見つめていた。目は、キラキラ輝いているように見えた。フリー転身後、女優としての初仕事だけに思いもひとしおなのだろうと思い、剛力の横顔を記者は見続けた。

そんな記者の予測を、剛力は裏切らなかった。午後6時20分頃にステージに立つと「芸歴は18年ですけど、18歳の時に役者として本格的にお芝居をやっていこうと決意した。ちょうど10年目。役者としても私自身も成長したい」と口にした。フリーになった立場から、これからは女優として生きていくと、堂々と宣言した。

その後、剛力が主演した3本の短編映画の予告が初公開された。「MASKAHOLIC」(洞内広樹監督)で有名人と間違えられてマスクを着ける女、「卵と彩子」(大森歩監督)でシングルマザー、「傷跡」(井上博貴)で2つの名前を持ち男に追われる女を演じた。「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」代表を務める別所哲也(55)は、国際映画祭に出品すると発表した。

藤色の着物を身にまとい、黒地に金色の帯を締めて登壇したこともあったのだろうが、取材後「剛力さんは以前と変わった」という声を各所で耳にした。「素敵になった」「顔つきが大人っぽくなった」との声もあった。

記者は14年の映画「L■DK」をはじめ、映画を中心に、これまで何度か剛力を取材してきた。オスカープロモーションという、大手事務所が力を入れて売り出していたこともあって、周囲は常に複数名のスタッフが囲んでいた。その中心で、剛力は年齢よりずっと若い、あどけないと言っても過言ではない笑みをはじけさせていた。

それが18年4月に、ZOZO創業者でスタートトゥデイ社長の前澤友作氏との交際が一部で報じられて以降、公の場に出る機会は激減。翌19年11月に、一部で前澤氏との破局が報じられ、その後、今年4月に同氏との復縁報道も飛び出したが、本業の女優業での話題は乏しく、表舞台から遠ざかっていた。その中、8月29日にオスカープロモーション退社の決意を固めたことが判明し、同31日に退社を発表。フリーになって最初の表舞台が「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」オープニングセレモニーだった。

この日は、カメラマンとディレクターと見られる2人が密着映像を撮っている以外、スタッフはいなかった。記者は、たまたま剛力が座った席の2つ隣の席に座っていたので、その存在にすぐ気付き、記者の近くにいたカメラマンも剛力の姿を撮影しようとしたが密着取材するスタッフが制した。

ただ、取材スタッフが、撮影しないよう付近のメディアを制しても、剛力は意に介さなかった。取材陣が徐々に気づき始め、視線の数が増えても、気にするそぶりもなかった。少なくとも記者が目視した限り密着取材している以外のスタッフはおらず、剛力は全てのことを1人で対応していた。守ってくれる人はいないし、全て1人でやる…そんな思いからか、どんなことにも全く動じる様子はなかった。

「堂々」と言う言葉は、演技にも当てはまる。短編のうちの1つ「卵と彩子」では出産シーンも演じた。激しくいきむ演技は、これまでに見た覚えがないほど激しく、力強かった。

女優…剛力彩芽のリスタートの瞬間を取材した。これから女優として、どこに進んでいくか、興味がある。【村上幸将】

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