「ラテンの女王」の異名で知られた歌手で、1983年(昭58)の映画「楢山節考」(今村昌平監督)にも出演した女優の、坂本スミ子さんが23日午前3時35分、脳梗塞のため熊本市内の病院で亡くなった。84歳だった。

坂本さんにとって、歌手として最後の大舞台は、2016年(平28)11月21日に都内のブルーノート東京で開催した生誕80周年記念ライブだった。そのライブで伴奏を務めた、49年結成の日本を代表するラテンバンド「東京キューバンボーイズ」の関係者は、日刊スポーツの取材に「ラテンシンガーは日本に少ない。貴重な方を亡くしました」と悼んだ。

坂本さんについて、同関係者は「とにかくステージでの存在感が圧倒的」と振り返った。その上で「ご年配になられても、ステージでの決めごとがあっても、実際にその場で違うことをやる。いろいろな展開があるので、バンドとしてはバタバタしましたが、その場の生の感覚を大事にされた方」と語った。

歌謡曲のヒットも多数ある坂本さんだが、同関係者は「やはりラテンがすごく好き。『生誕80周年記念ライブをやるなら、東京キューバンボーイズとやりたい』と言ってくださった。ありがたい半面、お応えしなければという思いで…光栄でした」と語った。ラテンの名曲「エル・クンバンチェロ」は、高校野球の応援ソングとして定番だが、その魅力を幅広く伝えたのは坂本さんであり、代名詞と言っても過言ではない。

同関係者は、女優の渡辺えりら、坂本さんに影響されて「エル・クンバンチェロ」を歌う歌手、女優も少なくないと説明。「若い方も、歌われている方がいる」と坂本さんの歌唱が音楽界、芸能界に、いまだ大きな影響を与えていると強調した。