福岡市内のライブハウス「アーリービリーバーズ」を経営する「アーリービリーバーズ・カンパニー」がこのほど、自己破産の申請準備に入った。帝国データバンク福岡支店によると、新型コロナウイルス感染症関連のライブハウスの倒産は全国初という。

大規模なコンサート会場はもとより、小中規模のライブハウスやライブ喫茶も、新型コロナの影響をもろに受けている。休業はもちろん、ライブ営業の一時中止など経営が悪化し、倒産寸前の店は数多い。昨年、新型コロナの感染が日本でも顕著になった時、大阪のライブハウスでクラスターが発生した。3密になりやすい空間であることは否めないが、以後、負のイメージが拭えない。

倒産第1号の出た福岡には、伝説的なライブ喫茶「照和」がある。ザ・ビートルズを生んだ英リバプールにちなみ、「日本のリバプール」と言われる。「昭和の世の中を明るく照らしたい」という思いから「照和」と名付けられた。語り尽くされているが、海援隊、井上陽水、チューリップ、甲斐バンド、CHAGE&ASKAら日本音楽史に名を残すアーティストやグループが数多く巣立って行った。デビュー前の長渕剛は「永渕剛(ながぶち・ごう)」の名前でステージに立っていた。この老舗も現在、ライブ営業は中止している。

東京にもいくつもの伝説的なライブハウスがある。72年に新宿でオープンして、その後、原宿に移った「RUIDO(ルイード)」は、ユーミンもサザンも浜田省吾もオフコースも尾崎豊も出演した。演歌系のテレサ・テンやフォークのイルカらも出演した。22年には50周年を迎える。「RUIDO」を冠するいくつかの店が存在したが、「池袋RUIDO K3」が昨年8月末で、「新宿RUIDO K4」も9月末をもって営業を終了した。もちろん新型コロナの影響だった。

ライブハウスは全国各地に老舗があり、みな苦悶(くもん)している。クレージーケンバンドが下積み時代を過ごした横浜の「FRIDAY」や、はっぴぃえんどや頭脳警察が出演していた渋谷の「B.Y.G」は、クラウドファンディング(インターネットを通じて、共感や支持してくれる不特定多数の人から資金を募る)を立ち上げている。

ライブハウスの苦境は日本だけでなく、ザ・ビートルズがデビュー前にライブを行い、ファンにとって聖地と言われる英リバプールのライブハウス「キャバーン・クラブ」もコロナ禍で閉店の危機にある。昨年末には日本でも支援のチャリティーイベントが行われた。アーティストだけでなく、ファンにとっても、地域にとっても大切なライブハウスの火を、消してはいけない。【笹森文彦】