宮沢氷魚(28)が6日、日本外国特派員協会で行われた映画「エゴイスト」(松永大司監督、2月10日公開)の試写後、開かれた会見に臨んだ。質疑応答で、岸田文雄首相と元秘書官が、性的少数者や同性婚の在り方などをめぐり差別的な発言をした、一連の問題に関し、見解を求められた。宮沢は「とても悲しい出来事では、あるんですけど…失言に対して、世論がたくさん声を上げたのは日本の未来への希望」と、前向きな持論を展開した。

「エゴイスト」は、20年に亡くなった高山真さんの自伝的小説の映画化作品で、宮沢演じるパーソナルトレーナーの中村龍太と、主演の鈴木亮平(39)が演じる出版社でファッション誌の編集者の斉藤浩輔がひかれ合っていく物語。その内容を踏まえ、LGBTQ+に関する質問が複数、出た。その中で、岸田文雄首相が同性婚の法制化をめぐり、1日の衆院予算委員会で、同性カップルに結婚の自由を認めようとしない理由について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と説明したこと、秘書官だった荒井勝喜氏が3日夜、性的少数者や同性婚の在り方などをめぐり「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と記者団に述べ、更迭された件について見解を問う質問が出た。

宮沢は「僕は今まで、政治的発言は、自分の一意見として、あまり表に述べては来なかったんですけども」と、自らのスタンスを説明。その上で「この1件で感じたことは、もちろん、政治的問題もあるんでしょうけど…人として(の問題)。発言が出たことによって、たくさんの人が声を上げて、その失言に対しての自分たちの意見だったり、何か行動するというものが今回、たくさん見えたと思う。それは、日本の今までの歴史を考えても、とても大きなステップアップだと思っていて。世界的に考えても、間違いなく日本は前進はしていると思うんですけど、他国に比べても後れを取っているところが、たくさんあると思います」と、世論が動いたことを評価した。

宮沢は米サンフランシスコに生まれ、幼稚園から高校までインターナショナルスクールに通い、卒業後は2年間、カリフォルニア大に留学した。その人生経験を踏まえ「世論の皆様が、たくさん声を上げたのは、日本の未来に希望が見えると思います。とても悲しい出来事では、あるんですけど…それによって、前向きな皆様の意思の強さ、意見を、どんどん発信しようとする姿が見えたと思う。僕は、そこに、もう少し、耳目が集まっても良いんじゃないかなと思います」と前向きな持論を展開した。

松永大司監督(48)も「先日、うちの国の首相が発言した言葉『同性婚を認めると社会が変わる』という言葉や、元秘書官の『目に入れたくない、側にいたくない』という差別的な発言をしている現状の中で、誤解だったり言葉が、大きな差別を生むと思っています」と岸田首相と元秘書官を批判した。

「エゴイスト」で、鈴木が演じる斉藤浩輔の友人を演じているのはゲイ当事者だ。また、性的マイノリティーに関するセリフや所作、キャスティングを監修するLGBTQ+インクルーシブディレクター、セックスシーンなど、身体的な接触があるシーンにおける動きの所作を監修するインティマシー・コレオグラファーが参加し、製作された。さらにメディアに配る資料には、LGBTQ用語集まで織り込んである。松永監督は「『エゴイスト』は、LGBTQ+に対しての定義だったり、理解を深く求めるものが大きな目的ではない。それでも映画を見た方が、考えてもらうきっかけになったらいいな、というのが1つの大きな理由」と訴えた。