作品賞、主演男優賞を含む7つのアカデミー賞にノミネートされた話題作「オデッセイ」(15年)。マット・デイモン演じる宇宙飛行士が火星に取り残されるストーリーの途中、カギを握ったのは中国の宇宙局だった。7つのアカデミー賞を受賞した作品「ゼロ・グラビティ」(13年)にも中国の宇宙ステーションが登場する。今、ハリウッド映画における中国の存在が大きくなっている。
ハリウッドの映画がこのように中国を良く見せる工夫をしている最大の理由は、中国の映画市場がとても大きいためである。英情報誌「The Guardian」は、2017年には中国の映画興行収入がアメリカを抜き、世界トップとなると予測する。国内の映画館の数が一年間で8000以上も増加したことで、興行収入が順調に伸びているようだ。
しかし、中国では国による映画の検閲がとても厳しい。外国の映画が中国で公開されるには、まず映画製作側が中国に脚本、もしくは完成した映画を提出し、これに対して検閲機関が修正を依頼する。この修正に応じれば、中国での公開が認められる。現時点では一年に海外から輸入する映画は原則34本とされている上、内容によっては検閲の際に不適切であると判断されてしまう。たとえば、アメリカでR指定で公開されたスーパーヒーロー・コメディー映画「デッドプール」(日本公開中)は、暴力的な内容であるとして中国では上映が禁止された。市場が大きい中国で上映できないことは、映画会社にとってこの上なく痛い。
そこで、検閲を通すために映画を調整するケースが増えている。マーベル・コミックの実写化作品「アイアンマン3」(13年)は中国の観客のために、ファン・ビンビンなど中国人俳優が活躍するシーンを中国公開版に付け足し、SF怪獣映画「パシフィック・リム」(13年)は香港でアクションシーンを撮影した。このように明らかに中国の観客に気に入られるために話を調整したり、映画の舞台を中国に移したりすることに関して、ストーリーを最優先にしていないなどという批判の声も上がっている。
一方中国では、国内映画も伸びている。中国の映画監督チャウ・シンチーによる映画「美人魚」(16年)はあるビジネスマンと、彼を暗殺するはずの人魚が恋に落ちるコメディー。この映画は中国映画最高の興行収入を記録し、アメリカの一部でも公開された。コメディー映画の人気が上昇している中国が今後国内映画を育て、全世界への輸出を進めれば、ハリウッドにも大きな影響があるだろう。世界の映画業界の動きに、これからも注目したい。【ハリウッドニュース編集部】