井上実香、亡き父井上竜夫さんと「ナイト大阪」熱唱

やなぎ浩二(左端)から花束を受け取り、笑顔の井上実香(中央)。右端は中村泰士氏=大阪市中央区(撮影・村上久美子)

 今月5日に亡くなった吉本新喜劇の「竜じぃ」こと、井上竜夫さん(享年74)の長女で歌手、井上実香(49)が18日、大阪・道頓堀ZAZAで、生前の父の歌声にあわせ、デュエット曲「ナイト大阪」を熱唱した。

 歌手志望だった井上さんは、喜劇俳優になり、30周年記念に楽曲をもらった。それが90年発売の「ナイト大阪」。デュエット曲だったため、井上さんは同じく歌手にあこがれていた娘と録音。実香はこれを機にメジャーデビューを果たした。

 「久しぶりに父の声と…ぐっときましたが、今日は泣いたらあかんと頑張りました。あらためて、これからも歌っていこうと思いました」

 ほっとしたような笑みで語った。この日は、通天閣歌謡劇場の閉鎖にともない、作詞家の中村泰士プロデュースで、道頓堀ZAZAを舞台に定期開催している「道頓堀SUPER歌謡劇場」への出演。実香は近年、中村氏のもとでボイストレーニングを行っており、その縁で、急きょ、ゲスト出演が決まった。

 実香によると、父の井上さんは「歌が好きで、とくに三橋美智也さんが大好き。元気なころは、他のお客さんの迷惑も顧みず、2時間でも3時間でも1人で歌ってるような人でした」という。娘の歌手活動を応援しており、持病の肺気腫が悪化する中でも、気にかけていた。

 井上さんは、数年前から入退院を繰り返し、酸素ボンベが手放せなかったが、昨年8月、実香のイベントへあいさつに登壇した際には、ボンベを外し、マイクを握ったこともあった。

 この日、花束を持ってかけつけた新喜劇出身のやなぎ浩二(74)も「見えっ張りなとこはあった。ボンベを引いてたから、外したらあかんのか? と、聞いたら『外してもええけど、楽やからつけとんねん』言うてた」と語った。

 その井上さんも、今年6月の入院時には、誤嚥(ごえん)性肺炎を防ぐため、一切の食事が禁じられ、同7月には胃ろうの手術を受けた。実香は当時の様子について、誤嚥性を防ぐトレーニングをしようとしたが「肺炎が重く、トレーニングができないうちに悪化した」と振り返った。

 葬儀は親族、親しい仲間だけでの密葬にしたことには、井上さん本人の意向と、美重子夫人の疲労の蓄積を考慮してのことだったという。実香は「(棺の中の)父にはお気に入りのスーツを着せて、ネクタイも1番好きなのを着けました。オシャレだったので」と話し、棺の中にはタイガースグッズや、好物だったうなぎ、チーズ、紙コップ入り焼酎を入れたと明かしていた。