行定勲監督アジア各国と共同製作は「すごく必要」

東京国際映画祭の記者会見に参加した、行定勲監督(左から3人目)ら(撮影・村上幸将)

 行定勲監督(48)と津川雅彦(76)加藤雅也(53)が26日、都内で開催中の、東京国際映画祭で開かれた映画「アジア三面鏡2016:リフレクションズ」の会見に参加し、フィリピン、カンボジアと共同製作した今作品の意義を強調した。

 質疑応答の中で、記者から行定監督と津川、加藤に「東京国際映画祭という日本の映画祭、枠組みでアジア各国と共同で映画を製作するプログラム。完成して、あらためて企画の日本映画界における意義、日本映画界において、この企画がどうあってほしいか? 日本映画界がどうあってほしいか?」と質問が飛んだ。

 行定監督 「越境するということを、経験として何カ国かやってきたが、それぞれの国のスタイル、作り方があるから基本的に思い通りになるものではない。思い通りにならないことが、逆に自分の知らない新しい道を切り開いてくれることもある。互いに影響していくことは、すごく必要だし、特に日本映画の作り方において、越境して作る状況にはあまりない。僕は20年くらい前から、本来アジアはもっと1つになって交流していって、新しい才能、ショックを日本映画に取り入れて、スタッフやキャストが入り乱れてやっていくべきだと思っている。そういう時代に来ている。どういう場所で映画を撮っても、世界の人たちに見てもらえる環境にあるということを知って、東京国際映画祭がどんどん、こういう企画を作っていっていただければと思っています」

 津川 「僕は日本映画そのものが、これまでアジアの中で発展させようという意欲がなかったことを、とても恥じています。僕らはアジア人ですから、アジアの中で、まず自分たちの文化を理解してもらうためにも、文化を通じて理解を深めることが経済よりも軍事力よりも大事なことだと思う。アジアが実は、日本映画にとっても大きな市場なんだという見識が、日本の映画配給会社人の、インテリジェンスの中にないという恥ずかしい現状がある。今、気付いても遅すぎない。この機会をチャンスにアジアの中に進出し、日本映画、文化が理解していただけるように行動を発揮するのは、とても大切だということが今回、参加して1番、思ったことです」

 加藤 「やはり観光で訪れるより、その国で働くことの方が得るものは大きいと思いますし、いいものを作り上げる目的に向かって進めば、どういう問題があっても、最終的にはみんなで手を握り合い(その先には)いいゴールがあると思う。こういうプロジェクトをもっと増やして、日本人の俳優、監督のことをアジアの人に知ってもらいたいし、逆にアジアのことを我々は知りたい。日本人は、どうしても、まだ鎖国をしていた影響があるのか、我々の文化を外国の人がちょっと違って取ると、いやそうじゃないと言う。そうじゃなくて、向こうが受け入れやすいように、こちらが妥協というか形を取らないと、ぶつかるだけ。受け入れる精神を持って作っていくことが、僕は大事だと思っています。いろいろな国で働くことで、その国の考えていることと、間違ったニュースが(日本国内)伝わった時、『いや違うんだ』と伝えていく力は大きいし、アジアがまとまっていく1つになる。ぜひ、こういう企画は、興行収入がどうだとかいうよりも、もっともっと長く続けていっていただきたい」

 「アジア三面鏡2016:リフレクションズ」は、東京国際映画祭が国際交流基金アジアセンターとの共同事業として、日本を含むアジアの3監督が1つのテーマを元に、オムニバス映画を隔年で共同製作する新シリーズ企画。今回のテーマは「アジアで共に生きる」で、行定監督が手がけた「ピジョン」に津川が、カンボジアのソト・クォーリーカー監督の「ビョンド・ザ・ブリッジ」に加藤が主演した。09年「キナタイ-マニラ・アンダーグラウンド-」でカンヌ映画祭監督賞を受賞した、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督が北海道で撮影を行った「デッドホース」を加えた3本のオムニバス映画となる。