第89回アカデミー賞授賞式が26日(日本時間27日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われる。史上最多タイとなる14ノミネートのミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(デイミアン・チャゼル監督)が、下馬評通りに賞レースを制すのか。それとも、大どんでん返しが起きるのか。かつてアカデミー賞の現地取材でタッグを組んだ、村上幸将記者と、ロス在住の千歳香奈子通信員による、ニッカンスポーツコム大予想大会その2…スタート!!
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村上 前回の大予想大会その1は、作品賞を軸に全体を見渡しました。大本命「ラ・ラ・ランド」(デイミアン・チャゼル監督)、対抗に「ムーンライト」(バリー・ジェンキンス監督、4月28日公開)といった下馬評がある中、トランプ政権の白人至上主義、移民政策への抗議が絡み、不確定要素が出てきている、というのが現状です。そこで第2回は俳優賞を予想しましょう。昨年、一昨年と白人しかノミネートされなかったことから、「白すぎるオスカー」と批判されましたが、今年は黒人6人、インド系1人がノミネートされました。
千歳 主演男優賞は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(ケネス・ロナーガン監督、5月13日公開)のケイシー・アフレック(41)が、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞などを受賞し優勢、対抗馬が「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング(36)という構図でしたが…。
村上 「白すぎるオスカー」批判の影響が出る?
千歳 全米俳優組合(SAG)賞を受賞したのは「フェンス」(日本公開未定)で監督、主演を務めたデンゼル・ワシントン(62)でした。タイトルが、トランプ大統領がメキシコとの国境に建てようとしている壁を連想させるだけでなく、主人公が「人を寄せ付けないためにフェンスを建てる者がいる一方で、人を中にとどめるためにフェンスを建てる者もいる」と語る場面もあり、受賞した場合のスピーチも注目されています。土壇場で大逆転もありえるかもしれません。
-ゴズリングは、ピアノを3カ月でプロ並みの腕前にまで上達させ、劇中では吹き替えなしでジャズを演奏している。主演女優賞にノミネートされた、エマ・ストーン(28)とのアベック受賞はないでしょうか? 2人が歌って踊る夜のシーンはすばらしかった。
千歳 ゴズリングは、キャリアの中で最高の演技とも言われていますし、俳優部門は毎年混戦が予想されますから、最後まで行方は分からないですが、主演男優賞受賞は難しいとの見方が強いです。一方、ストーンは大本命。歌って踊って、恋して観客を楽しませてくれましたからね。素晴らしい演技を見せた彼女は、歌も口パクしていませんし編集もしていないので受賞は、ほぼ間違いないかと。
村上 助演男優賞は、「ムーンライト」で主人公の少年をいじめから救い、父のようにかわいがる黒人男性を演じたマハーシャラ・アリ(43)、助演女優賞は「フェンス」で主人公の妻を演じたビオラ・デイビス(51)の評価が高い。
千歳 アリとデイビスの受賞は確実視されています。黒人俳優の演技はすばらしく、これまでのうっぷんを晴らすような躍進を遂げている印象です。
村上 「LION/ライオン~25年目のただいま~」(ガース・デイビス監督、4月7日公開)で、インド人少年の成長後を演じた、デブ・パテル(26)の演技も印象的だった。09年に作品賞、監督賞など8部門でオスカーを獲得した「スラムドッグ$ミリオネア」で、主人公の少年を演じてから8年たっての初ノミネート。
千歳 作品として、やはり「ムーンライト」が「LION-」よりも評価が高いですね。白人ばかりがノミネートされて批判が出ており、黒人が主人公の良い作品を人々が待ち望んでいたタイミングで公開されたことが大きかったのは、間違いありません。「LION-」は、インドの5歳の子どもが迷子になって、施設から養父母にもらわれてオーストラリアに渡り、大人になって25年ぶりに実の家族と再会する物語。実話だということに多くの人が驚き、感動したのは事実です。公開時期がずれていれば、違った結果になったかもしれません。
村上 その他の賞ですが、スタジオジブリが製作に参加した日・仏合作映画「レッドタートル ある島の物語」がノミネートされた、長編アニメ賞はどうでしょう?
千歳 中世の日本をテーマにしたファンタジックなストップモーションアニメ「クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス」(トラビス・ナイト監督)が、批評家の評価が高く最有力。対抗馬は、アニメながら偏見や差別をテーマにした「ズートピア」で、トランプ政権に反対する人々に支持されれば、受賞の可能性もあるでしょう。
では、ここでお互いの予想を!!
千歳
<作品賞>
◎「ラ・ラ・ランド」
〇「ムーン・ライト」
△「ヒドゥン・フィギュアズ」
<監督賞>
◎デイミアン・チャゼル(「ラ・ラ・ランド」)
〇バリー・ジェンキンス(「ムーンライト」)
<主演男優賞>
◎デンゼル・ワシントン(「フェンス」)
〇ケイシー・アフレック(「マンチェスター・バイ・ザ・シー」)
△ライアン・ゴズリング(「ラ・ラ・ランド」)
<主演女優賞>
◎エマ・ストーン(「ラ・ラ・ランド」)
〇イザベル・ユベール(「エル」)
△ナタリー・ポートマン(「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」)
<助演男優賞>
◎マハーシャラ・アリ(「ムーンライト」)
〇デブ・パテル(「LION/ライオン~25年目のただいま~」)
△ジェフ・ブリッジス(「最後の追跡」)
<助演女優賞>
◎ビオラ・デイビス(「フェンス」)
〇ミシェル・ウィリアムズ(「マンチェスター・バイ・ザ・シー」)
△ナオミ・ハリス(「ムーンライト」)
村上
<作品賞>
◎「ラ・ラ・ランド」
〇「ムーン・ライト」
<監督賞>
◎デイミアン・チャゼル(「ラ・ラ・ランド」)
〇バリー・ジェンキンス(「ムーンライト」)
<主演男優賞>
◎ケイシー・アフレック(「マンチェスター・バイ・ザ・シー」)
〇ライアン・ゴズリング(「ラ・ラ・ランド」)
△デンゼル・ワシントン(「フェンス」)
<主演女優賞>
◎エマ・ストーン(「ラ・ラ・ランド」)
<助演男優賞>
◎マハーシャラ・アリ(「ムーンライト」)
〇デブ・パテル(「LION/ライオン~25年目のただいま~」)
△ジェフ・ブリッジス(「最後の追跡」)
<助演女優賞>
◎ビオラ・デイビス(「フェンス」)
〇ナオミ・ハリス(「ムーンライト」)
(◎=本命、○=対抗馬、△=大穴)
セットではなく、ロサンゼルス市内でのロケ撮影でミュージカル映画を作り上げた、「ラ・ラ・ランド」のチャゼル監督の手腕を評価する声は高い。ハイウェイで渋滞した車の中から、人々が飛び出して歌うシーンは圧巻だった。その下馬評通りの結果になるのだろうか…世界の視線が、ドルビーシアターに集まる。