村上虹郎「キラキラしていた」上海国際映画祭に参加

満員の観客に歓迎される村上虹郎(撮影・杉山理紗)

 俳優村上虹郎(20)が25日、主演映画「二度めの夏、二度と会えない君」(中西健二監督、9月1日公開)を引っさげて、第20回上海国際映画祭に参加した。中国語であいさつし、超満員の会場からは大きな歓声が上がった。役者などに興味のなかった青年が、世界へ羽ばたいている。

 「ニーメン ハオマ(ごきげんよう)。ウォーシー ツォンションフォンラン(村上虹郎です)。シェシェ ダージャーライカン ウォダ ディエンイン(見に来てくれてありがとう)」。観客を喜ばせようと覚えた中国語であいさつすると、600人で埋め尽くされた会場のSFC上影影城・新衡山店は、黄色い歓声と拍手に包まれた。

 「村上大好き」と日本語で書かれたうちわを持った中国人女性ファンもおり、現地での人気の高さも伺わせた。「顔のアップが多い映画だったけど、耐えられましたか?」と観客に問いかけると、「カッコイイ~!!」と日本語で返事が来た。「お客さんが温かかったです。見終わった人たちの表情がキラキラしていたのは、印象的でした。うれしかったです」。1泊の弾丸渡航だったが、充実した表情を浮かべた。

 「二度めの-」は、病床に伏せる大切な人へ、亡くなる直前に言った“ひと言”に後悔した青年が、タイムリープして2度目の夏を過ごす、切ない青春ラブストーリー。劇中では山田裕貴(26)ガールズバンドたんこぶちんの吉田円佳(21)モデル金城茉奈(21)AKB48加藤玲奈(19)と高校生バンドを組んだ。互いに役名で呼び合い、スタジオを借りてバンド練習するなど、同年代と作る現場を楽しんだ。歌手、モデル、アイドルと、さまざまな畑の人間が集まったが「普段芝居をしていない人の方が、存在感が強いことがある」と、魅力を感じた。

 俳優村上淳(43)と歌手UA(45)の間に生まれ、芸能界は身近だった。しかし興味はなかった。「面倒くさいじゃないですか、有名人になるって。両親がそうだったんで」。東日本大震災を機に沖縄へ移住し1年間過ごし、高1でカナダ・モントリオールに留学した。音楽や映画にあふれた芸術の街に刺激を受けた。帰国後、母の友人でもあった河瀬直美監督からオーディションを勧められ受けてみた。デビュー作にして主演した「2つ目の窓」で、いきなりカンヌ映画祭に参加した。はからずも両親と同じ世界に飛び込んだ。

 役者としての父は「得手不得手の激しい魅力的な人」と感じている。「息子からすると、おやじ役とかだと、へたくそだなと思うんですよ。でもオヤジらしい役はあって、そういう役見るとすげえなと思うし、勝てねえと思うこともある」。しかし目標は、父さえも超えたその先だ。「誰もやったことないことやりたい、俳優としても人としても。人をなぞってても、何の面白みもないじゃないですか」。虹郎らしいひと言だった。【杉山理紗】

 ◆村上虹郎(むらかみ・にじろう)1997年(平9)3月17日、東京都生まれ。14年映画「2つ目の窓」で主演を務め、芸能界&俳優デビュー。同作でカンヌ映画祭に参加。15年フジテレビ系「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」でドラマ初主演。代表作にTBS系ドラマ「仰げば尊し」、16年映画「ディストラクション・ベイビーズ」など。趣味は水泳、ギター、剣道、乗馬など。

 ◆上海国際映画祭 今年で20回目で17日から26日まで開催。期間中に約500本が上映。中国では日本映画が人気で、映画祭で57本、映画祭と並行して行われている「日中映画週間」には8本が出品されている。コンペティション部門に「追憶」「夜明け告げるルーのうた」。アジア新人コンペ部門では斎藤工が監督デビュー作「blank13」で最優秀監督賞を受賞。