砂川啓介さん死去、大山のぶ代に「先に死ねない」も

01年1月、旅行先のハワイでインタビューを受ける大山のぶ代、砂川啓介さん夫妻

 俳優砂川啓介(さがわ・けいすけ)さん(本名山下啓一=やました・けいいち)が11日午前4時10分、尿管がんのため都内の病院で亡くなっていたことが18日、分かった。80歳だった。砂川さんはアニメ「ドラえもん」の声で知られる妻大山のぶ代(83)の認知症を公表し、介護していた。だが、昨年4月に尿管がんが判明。「君より先に死ねない」と闘病しながら、大山のサポートを欠かさなかった。葬儀・告別式は故人の遺志で近親者のみで行った。

 認知症の妻大山に、「君を置いて先に死ねない」と言っていた砂川さんにとって無念の死だった。

 16年4月に尿管がんと診断された砂川さんは、抗がん剤と放射線治療で入退院を繰り返しながら、大山をサポートしていた。今年5月15日に、肺にたまった水を抜くために入院。6月9日に退院も、同13日には血圧が60台に下がり、意識不明となった砂川さんをマネジャーが発見し緊急入院した。

 数日後、意識が戻った砂川さんはマネジャーに「すまないね。頼むよ」と、大山を気に掛けていたという。砂川さんが治療に専念するため、在宅介護から老人ホームに移った大山も数回見舞いに訪れた。砂川さんは会話できる状態ではなく、大山が「頑張って」「大丈夫?」と声を掛けたという。

 今月11日未明に容体が急変した。大山は、砂川さんの最期をみとることはできなかった。葬儀所で、ひつぎの中にいる砂川さんと対面したが、しばらくして「もう帰る」と会場を後にし、通夜、告別式は欠席。夫の死をどこまで認識したかは不明だという。

 砂川さんは高校時代から映画に出演するなど、芸能活動を続け、1961年(昭36)にNHKの子供番組「うたのえほん」(後に「おかあさんといっしょ」と併合)で初代「たいそうのおにいさん」に起用され、人気を集めた。64年に番組の共演が縁で大山と結婚。80年から日本テレビ系「お昼のワイドショー」の司会を6年間務め、その後は俳優として舞台やドラマに出演した。

 おしどり夫婦として知られたが、大山は26年間演じた「ドラえもん」を05年に降板し、08年に脳梗塞を発症。12年に認知症と診断された。砂川さんは15年5月に会見し、大山の認知症を公表し、自らも13年に初期の胃がんで手術を受けたことを明かした。同年10月に出版した著書「娘になった妻、のぶ代へ」で最初の妊娠が死産で、72年に生まれた長女が生後3カ月で亡くなったことをきっかけに「寝室を別にして、いわゆる夫婦生活がなかった」と、40年間のセックスレスも告白したことが話題になった。