吉永小百合「楽しいです」女優人生初の舞台に挑戦

映画「北の桜守」の劇中劇で、舞台に初挑戦する吉永小百合(中央)。後ろは阿部寛

 吉永小百合(72)が、主演映画「北の桜守」(滝田洋二郎監督、来年3月10日公開)で、女優人生で初の舞台に挑戦した。戦中、戦後を北の大地で生き抜いた女性を描いた同作の中で、樺太からの引き揚げ場面を劇中劇で表現している。このほど、都内スタジオで、舞台部分の撮影に挑んだ。

 吉永はスタジオ内につくられた舞台を、縦横無尽に動いていた。「楽しいです。学生時代に返ったような気持ちです」と、笑みを浮かべた。中学時代は演劇部に所属、高校を出たら新劇に応募しようと思っていたこともあると明かした。

 高校在学中に、映画「キューポラのある街」で一躍映画スターになったため、なかなか舞台に出演する機会がなかった。50年前に開催したリサイタルで、ミュージカル仕立ての演目があったが、本格的な芝居をする舞台は今回が初めて。

 吉永は「杉村春子さんや坂東玉三郎さんといった、すごい人の舞台を見すぎたら、とても自分にはやれないと思った」とも話した。しかし、舞台部分を演出した演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(54)は「小百合さんの存在は特別。20年前だったら、(舞台に)引きずり込んでいたと思う」と絶賛した。

 過去を振り返る劇中劇では、樺太での幸せな生活を、吉永や、夫役の阿部寛、2人の子供たちが合唱で表現。一転、ソ連軍侵攻の気配や、夫が行方不明になったことが、スピーディーに展開する。舞台に出たままでの場面転換が連続するが、吉永の動きは滑らかで、周りのパフォーマーとのタイミングはぴったりだ。吉永は「体力がいるものは得意です」と余裕も見せた。

 もともと劇中劇を入れる予定はなかったが、樺太の悲劇を舞台風に抽象化して描くことで、分かりやすくなると決まった。終盤には、NHK紅白歌合戦で北島三郎が見せたような大量の花吹雪も予告した。吉永は「出来上がったものがどうなるか、ものすごく楽しみです。最後は北島三郎さんもびっくりのすごいことになります」。

 今年2月から北海道や東京などで続いてきた同作の撮影は、今月中旬にクランクアップした。【小林千穂】

 ◆「北の桜守」 江蓮(えづれ)てつ(吉永)は一家で樺太で暮らしていたが、終戦後、ソ連の侵攻で土地を追われた。息子たちと網走にたどり着き、過酷な環境を生き抜いた。歳月が流れ、米国で事業を成功させた次男修二郎(堺雅人)が帰国し、年老いたてつと再会した。てつと修二郎は、北海道で過去をたどる旅を始める。吉永は30代後半から60代の約30年を演じる。