セリフなし舞台で輝く「純白姫」18歳吉田美佳子

舞台「アラタ~ARATA~」劇中役での千代姫の衣装で笑顔を見せる吉田美佳子(撮影・横山健太)

 20年東京五輪やインバウンド需要を見越し、セリフなどの言葉を発さないノンバーバル舞台「ALATA(アラタ)」(東京・有楽町のオルタナティブシアター)が話題だ。外国人にも理解しやすいよう、ほとんどのセリフを排除した。演出は「あずみ」シリーズなどで知られる岡村俊一氏が手掛け、演者は体の動きと表情などで物語を伝える。オーディションから出演をつかみ、岡村も認める逸材の女優吉田美佳子(18)に話を聞いた。

 物語は、戦国時代の侍で、早乙女友貴(21)演じる主人公のアラタが20年の東京にタイムスリップするところから始まる。セリフはないが、刀を使った殺陣に加え、ワイヤアクションやダンス、プロジェクションマッピングなどで観客を魅了。外国人受けも狙い、温水洗浄便座や満員電車など、現代の日本を表す描写も取り入れた。

 吉田は、和の美しさを象徴する白い着物に身を包んだ戦国時代の姫である千代姫を演じる。敵に襲われるシーンもあり、感情の揺れ動きを表情としぐさだけで巧みに表現する。今作を含め、計3度にわたって吉田の出演舞台を手掛けてきた岡村氏は「同世代の女の子で言えば群を抜いている。彼女は信念の強い、かたくなな子に見えるし、この物語はそこが重要。頭が良くて、覚えも良いし、伸びると思います」と高く評価する。吉田は「本当に心が動いてからその行動をすることを守ってやっています。(泣くシーンでは)舞台袖でも本当に泣いちゃって。回数を重ねるうちに、すごく感情が動くようになりました。これからも成長できると感じています」と手応えを口にする。

 同舞台はフランス語や英語の広告も製作しており、今月7日の上演開始以来、じわじわと外国人客も増えているという。吉田は「外国の方にももっと見てもらいたいです。お姫さま役なのでダンスや殺陣はやらないけど、私も日本人の美を体現しているという責任感を感じているので、自分の役割を果たしていけたらいいなと思います」。

 今春から通う大学では英語を専攻。週6日は授業に出席しながら舞台出演をこなしている。「両立は大変ですけど、生活のリズムができるのはいいなと思います。今後はアクションとかいろんなことに挑戦したい。英語もやっているので、世界を目指して、誰が見ても感動するようなお芝居ができる女優さんを目指していきたいです」。【松尾幸之介】

 ◆吉田美佳子(よしだ・みかこ)1999年(平11)3月30日、東京都生まれ。14年に現事務所にスカウトされ、同年の舞台「つか版・忠臣蔵~大願成就討ち入り篇」で女優デビュー。15年に映画「罪の余白」、舞台「AZUMI幕末編」、16年には舞台「ReLIFE」などに出演。おでこがチャームポイントで、特技は合気道、バドミントン、クラシックバレエ。目標の女優はナタリー・ポートマン、安藤サクラ、蒼井優。身長158センチ。血液型A。

 ◆ALATA(アラタ) 今月7日開業のオルタナティブシアターのこけら落とし公演として開始したオリジナル舞台。戦国時代の侍である主人公のアラタが、千代姫を守る戦いの中で祈祷(きとう)師の呪文によって20年の東京へとタイムスリップ。そこでヒロインのこころと出会い、さまざまな騒動を巻き起こしながら戦国時代へ戻る手がかりを探して奔走する。横内謙介氏作、演出は岡村俊一氏。現時点で今年いっぱいまでのロングラン上演が決定している。