盟友清志郎さん死から8年…名曲復刻にかけた思い

インタビューに答える仲井戸麗市(撮影・瀬津真也)

 忌野清志郎さん(享年58)が率いたRCサクセションの元ギタリストでシンガー・ソングライターの仲井戸麗市(66)が、同バンドの名曲で清志郎さんとの共作「雨あがりの夜空に」をセルフカバーする。13日に先行配信、10月18日にアナログ7インチレコード盤を発売する。盟友の死から8年。セルフカバーに込めた思いを聞いた。

 発表から37年9カ月の時をへてセルフカバーする。仲井戸の誕生日にあたる来月9日、RCサクセション時代の思い出が詰まった東京・日比谷野外音楽堂でライブを開催することが決まり、話が一気に進んだ。

 「RC時代、よく夏にやっていた日比谷野音でのライブが決まり、その流れで事務所社長に提案してもらってね。曲を作った80年当時は清志郎の隣でギターを弾いていたから、まさか自分の歌でとるなんて、夢にも思わなかった。いつもは尻込みする俺でも、心の中で清志郎に『俺の声で吹き込んでもいいか』と問い掛けたりした上で『いい機会だし、これは吹き込んでおくべき、おきたいな』って思えた」

 RCは当初、売れないフォークソングバンドだった。70年代後半、ロックバンドへ転身し仲井戸が正式加入。人気に火がつき始めた時期に、2人が「ローリング・ストーンズの『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』のような最後に盛り上がる曲を作ろうぜ」と、意気投合してできた曲だった。今では、日本中のロック・フェスティバルのクライマックスなどで、大勢のアーティストに歌われる曲になった。

 「別に歌番組でランクインするヒット曲じゃなかった。RCって大ヒット曲があるバンドじゃない。それでもライブ映えするというか、清志郎が築いてきたものなんだけど、今でもフェスの最後に若い子たちまで歌ってくれる曲になった。不思議だけどRCっぽいんだよね」

 盟友の功績というが、清志郎さんが亡くなった8年前から、仲井戸が歌い継いできた成果でもある。

 「キヨシ(=清志郎さん)がいなくなった当初、俺が歌っていいのか迷うこともあったけど、使命感なんて大げさなものではないけれど、今は歌いたいし、歌わなきゃって思いも、とてもあるんだ」

 セルフカバー曲には、清志郎さんの歌声のように聞こえる瞬間がある。

 「そばで一番聞いて影響を受けていたからかな。それに清志郎君から歌い方のアドバイスをしてもらったこともあったしね。清志郎みたいには歌えなくても、どこかで感じる部分があるのかも」

 同曲を引っ提げた誕生日ライブ会場は日比谷野音。91年からバンドは活動休止に入ったが、4年後、2人で一夜限りのライブを行った思い出の地であり、約束の地でもあった。06年夏、再び共作するようになった2人は野音でライブを開催する予定だった。しかし清志郎さんのがん判明で中止となった。1年半の闘病生活から復帰し、08年2月に東京・日本武道館で行った復活ライブで再共演したが、同年7月、がんの再発で、本来の約束だった「夏の野音」は実現しなかった。

 「野音はRCと清志郎の印象が強烈でね。ステージ上でまだ幼い息子を抱き上げた時の清志郎君の笑顔とか風とともにその景色とにおいが残っている」

 「清志郎」「キヨシ」「清志郎君」…。いくつもの呼び名で話すところに、仲井戸が抱くさまざまな思い出が垣間見える。今も「ゴールデン・デイズ」と呼ぶ怒濤(どとう)のように駆け抜けた80年代の10年。記憶と友を胸に2人の名曲を約束の地に響かせる。【瀬津真也】

<「雨あがりの夜空に」あらかると>

 ▼カバー 櫻井和寿が参加したBank Bandや和田アキ子まで多くのアーティストが歌ってきた。清志郎さんも05年にRHYMESTERとセルフカバー。

 ▼お笑いコンビ 「雨上がり決死隊」のコンビ名の由来に。

 ▼映画 13年の竹中直人主演映画「ケンとメリー雨あがりの夜空に」のモチーフ。14年映画「日々ロック」の中で二階堂ふみが3分以上長回しで熱唱。

 ▼ドラマ 08年連続ドラマ「無理な恋愛」で堺正章が毎回カラオケで歌唱。

 ▼応援歌 J1大宮の応援歌「愛してるぜWe are ORANGE」は替え歌。

 ◆RCサクセション 清志郎さんら3人のフォークバンドとして69年シングル「宝くじは買わない」でデビュー。78年から仲井戸らが参加、奇抜なメークやファッションが若者に支持され、80年代前半のサブカルチャーのカリスマに。ザ・ローリング・ストーンズやセックス・ピストルズをほうふつとさせるロックバンドとして人気を獲得。88年に反戦・反核をテーマにしたアルバム「カバーズ」でオリコンランキング1位。90年末に活動休止。