オダギリジョー「SAMURAI精神」キューバでも

日本・キューバ合作映画に主演したオダギリジョー(撮影・滝沢徹郎)

 オダギリジョー(41)主演の日本・キューバ合作映画「エルネスト」(阪本順治監督)が明日6日から公開される。革命家チェ・ゲバラとともに、母国と自由と愛のため戦った日系ボリビア人、オダギリ演じるフレディ前村ウルタードの生涯を描く。ロケ先のキューバで地元の人みたいと評判になった丁寧な役作りのほか、全編スペイン語に挑戦した撮影を振り返った。

 英語やスペイン語で現地スタッフや共演者と会話を交わす。キューバロケ現場でキューバ人やボリビア人に交じっても、何の違和感もない。ある日本人関係者は、大勢の外国人俳優と同化したオダギリを見つけられなかったという。「ボリビア人役ですが、運転してくれていた方も『クーバーノ(キューバ人)に見える』みたいなことを、毎日のように言ってくれて。まったく違和感がないのはうれしかったですね」。

 入念に準備し、特にスペイン語の特訓は半年以上かけたという。「ハードルの高さが、やりがいを感じた1つでした。慣れや甘えがまったく通用しない。初心に戻してくれる」。キューバロケ開始2~3週間前に現地入り。共演の外国人俳優に毎日5~6時間、スペイン語の発音を含めた演技レッスンについてもらった。

 色黒をキープするために撮影中も体を焼いた。「暑い中、走っていたので、暑いハバナで日中に走るバカはいないと言われました(笑い)」。外国人役だが「日本人らしさだけは忘れたくなかった」と言い、「誠実で実直で、意志が強くて信念を曲げない。SAMURAI精神みたいなものを、ほのかに感じさせられればいいと」。

 ロケは過酷で、食べ物が合わず、現場で吐いたこともあった。ゲリラ戦の撮影では、熱帯ジャングルの暑さとも闘った。「どれだけ水を飲んでも汗で出ていくので、1度もトイレに行かなかったですね」。2~3カ月、伸ばしたひげも爪もストレスになった。

 キューバ滞在は音楽番組を含め3回目。滞在は2カ月に及んだ。「車の窓にカメラを固定する機材がなかったので、アイデアを出し合い、手作りで作ったり。プロフェッショナルな集まりでした」。

 日系人だが外国人を演じる機会はまずない。「やることが多いのも含め、これ以上の役はなかなか巡り合わない。財産になったし、人間的にも成長させてもらった気がします」。人として俳優として、確かな手応えを感じている。【近藤由美子】

 ◆映画「エルネスト」 キューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ゲバラとボリビアで行動を共にした日系人がいた。ボリビア日系2世のフレディ前村ウルタードは医師を志し、キューバの国立ハバナ大学に留学。キューバ危機の最中にゲバラと出会い、共感し、ゲバラの部隊に参加。母国の愛と自由のためにボリビア軍事政権に立ち向かう。日本・キューバ合作長編映画は、69年津川雅彦主演「キューバの恋人」(黒木和雄監督)以来、48年ぶり。