小室哲哉「音楽の道を退くことが私の罰」騒動けじめ

涙をこらえる小室(撮影・鈴木みどり)

 音楽プロデューサー小室哲哉(59)が19日、都内で開いた会見で芸能活動からの引退を発表した。発売中の「週刊文春」で報じられた不倫疑惑について釈明する場だったが「騒動のけじめとして決意した」。きっかけは週刊誌報道だが、09年に詐欺罪で執行猶予の判決を受け、その後も妻KEIKO(45)が、くも膜下出血で倒れ、自分の体も満身創痍(そうい)となったという。自分の音楽が必要とされているのか思案した末に「もはやここまでか」と決断した。

 「引退」の2文字は、冒頭のあいさつでいきなり飛び出した。「皆様にご迷惑をお掛けしたことにおわびすると同時に、僕なりのこの騒動のけじめとして引退を決意しました」。約150人の取材陣から驚きの声が上がった。往診を受けていた看護師との不倫疑惑について釈明する会見だったが、前夜にしたためた文書を手に、引退に至った経緯を話し続けた。

 自分の音楽を最も理解してくれた歌手の1人、KEIKOが病に倒れ、音楽への興味と関心を失った。以前のように一緒に音楽に取り組もうといった試みも効果がなく、この日は寂しそうに「職業である歌手としてのKEIKOは、やっぱり大きな存在でした」。

 自分も12年にC型肝炎を患った。薬の副作用で足を骨折したり、仕事と介護のストレスで摂食障害や睡眠障害と診断を受け、昨年8月には一時入院もした。ほぼ同時に突発性の難聴も発症。音楽制作と介護の両立に限界を感じ、引退が頭に浮かんだという。そんな時に、時間や場所を選ばずに往診してくれたのが、不倫疑惑を伝えられた看護師で「精神的な甘えから、互いのプライベートの悩みや心配事も話し合うようになった」と依存度も高まった。

 還暦を控え、音楽制作にも限界を感じ始めた矢先の週刊誌報道を「(引退決意の)起爆剤になったというか、頭をもたげていたものが急に出てきた。昨年末くらいから、何かこういう事態が起こるのではという胸騒ぎがあった。僕から言うと戒めかな。もはやここまでかなと思いました」。

 09年に著作権譲渡を巡る5億円の詐欺罪に問われ、執行猶予判決を受けた後、復帰して音楽活動を続けるべきか悩んだ。不倫疑惑で取材を受けた時、「裁判所で聞いた判決のような感覚を思い出しました。罪があれば罰もある、そんな感覚を持った」という。既に引き受けていた楽曲制作やプロデュースなどは「望まれるのであれば最低限のことは全うしたい」としたが、自発的な音楽活動からは退く。

 一時代を築いたヒットメーカーは「芸能人になりたかったとか、ヒット曲を作る人間だと思ってやっていたのではなく、ただ音楽が好きで始めた。90年代に想像できないくらいの売り上げからくる過信や慢心、才能の枯渇から20年。そこそこの歳月が過ぎたのかな」と静かな口調で波乱の音楽人生を振り返った。約1時間40分の会見中、時に涙を浮かべて語った。「悔いなしという言葉は出てこない。それでも音楽の道を退くことが私の罰。今日が一番つらい日です」。【大友陽平】