秋元劇団旗揚げ!鍵握る岡田帆乃佳、前田悠雅に迫る

エイベックス本社17階にあるカフェで働く「劇団4ドル50セント」の前田悠雅(左)と岡田帆乃佳

 秋元康氏がプロデュースを手掛ける「劇団4ドル50セント」の旗揚げ本公演「新しき国」が、2月8~12日に東京・紀伊国屋ホールで行われる。昨年8月に、秋元氏とエイベックス松浦勝人代表取締役CEOが共同で立ち上げた劇団プロジェクトとしてお披露目され、同11月にプレ公演を開催。「最も熱量のある劇団に」(秋元氏)と立ち上がった、ほぼ演劇経験ゼロの劇団員30人(男性10人、女性20人)が、本格的に船出する。今作のメインキャスト8人にも選出されたリーダーの岡田帆乃佳(21)と前田悠雅(ゆうが=19)に話を聞いた。【聞き手=大友陽平】

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 -旗揚げ本公演が目前に迫っています

 前田 連日9時間くらい稽古をやっていますが、いいなと思ってやっていたことが、次の日にやってみると違う感じになっていたり…。時間が足りないです。

 岡田 ずっと模索してますね。先日、秋元先生が稽古場に来てくださったときに「味がない」とおっしゃって…。それが今の課題です。これまでは、熱量だけでごまかしていました。

 前田 自分たちが本当にやりたいことは何なのだろうか…って考えました。

 岡田 みんなとは「自分の思ったとおりにぶつけてみよう」と話し合って、いい意味で吹っ切れた部分は出てきていると思います。

 前田 みんな、心がさらに動かされました!

 -劇団鹿殺しの丸尾丸一郎氏が演出・脚本を手掛ける「新しき国」は、寂れた地方都市が舞台で、夢に破れたミュージカル女優らバックボーンを抱えた人や、商店街の住人たちが、町を守るためにオリジナルミュージカルを創作するという物語です

 岡田 私は、商店街の組合長で、街を盛り上げて、希望を与えたいと奮闘する役です。劇団のリーダーもやらせてもらっていますが、他人に何かをしてあげたいと思うところは自分とも似ているかもしれません。

 前田 東京から来る町役場の新人職員役で、すごくマジメです。自分も似ている部分があって、嫌いな部分でもあったんですけど、いいところもあるんだとは感じ始めてます。

 -メインキャストの8人は、YouTubeに課題の動画をアップして視聴者投票を行うなど“公開オーディション”で選ばれました

 前田 プレ公演が終わって、メンバーの結束力が高まってきた中で、またみんなで争わなければいけなかったので…。複雑でした。

 岡田 自分は選ばれてうれしかったんですけど、落ちてしまった子もいたので複雑でした。でもこれでメンバーのメンタルも強くなってますし、次は負けないぞという感じになっているので、いい流れにはなっていると思います。

 前田 結果発表後の稽古も気まずくなるのかなと思ってましたが、思ったよりもみんな同じ方向を向いていて、前向きでしたね。

 -お披露目されてからは、個人レッスンに励みながら、おふたりは所属するエイベックス本社17階の社員食堂で働いていると聞きました

 岡田 それまでは、私は携帯電話の組み立てや掃除をするようなバイトをしてました。

 前田 私は身内が経営する美容室で雑用をしていました。お話しがあったときは「ぜひ働かせてください!」と即答でした。

 岡田 カフェカウンターでコーヒーを作って出したり、食器の片付けをしたりしています。他のメンバーも働いていて、今は稽古と本番で入っていませんが、2人はほぼ毎日シフトに入っていました(笑い)。

 前田 社員の方が「劇団員だよね?」と声を掛けてくれて。所属する会社の人たちですけど、少しでも自分たちを知ってもらえているのはうれしかったです。

 -岡田さんは愛媛出身です

 岡田 中3の時に、地元で行われた「a-nation」にバックダンサーとして出演したのですが、その時にスカウトしていただいて上京しました。それから舞台にも出させていただいて、初めて見てくださる方が印象的だったと言ってくださったり、舞台ってすごいと思っていました。

 -なぜ「劇団4ドル50セント」に挑戦しようと思ったのか

 岡田 ちょうど20歳で、芸能生活も5年になって、ここでダメだったら辞めようと、最後のオーディションと思って受けました。

 -それまでの5年間は

 岡田 お仕事はちょこちょこさせていただいていましたが、ただの学生に近かったです。芸能コースのある高校に通っていたのですが、周りにかわいい子ばかりで、この中で戦っていかなくちゃいけないんだって、ネガティブになったこともありました。ただ活躍している子は、学校に来ても授業中は絶対に寝ないし、ずっと笑顔でいるんです。プロ意識は周りから学んでいました。

 -劇団ではリーダーを務めます

 岡田 リーダーとしては何も出来てないです。最年長のうえきやサトシが、本当にみんなを引っ張ってくれていています。私はポンコツです…。

 前田 全然そんなことないよ! 劇団の中で、年齢が若くて、苦しいことも言えなかったりする子もいたりしますが、「大丈夫?」って気付いてくれるのは帆乃ちゃんです。それでいて楽観的なところもあって、悩んでることも、すぐに楽しいことに変えられる人。リーダーにそういうタイプの人がいると楽ですよね。全てを包んでくれるみんなのお母さん的な存在なんです。

 岡田 うれしい…。ありがとう!

 -自分の強みは何でしょうか

 岡田 舞台が好き、この劇団が好き、この劇団を日本一にしたい…。そういう思いは強みになるかなと思います。どうやっても強い性格の役が多くなってしまうんですけど、それは唯一の強みになるかなと思います。

 -前田さんの芸能界入りのきっかけは何ですか

 前田 2016年にエイベックスの「東京ガールズオーディション」を受けて、グランプリをいただいて芸能界に入りました。芸能界への憧れはあったんですけど、オーディションを受けるまでではなくて、一歩が踏み出せていなかったんです。その時に、親が「1つオーディションを受けてみてから決めたら?」と受けた初めてのオーディションでした。

 -学生時代はどんな学生でしたか

 前田 普通の女子高生でした。ダンスと軽音楽部を兼任して、歌うことが好きで、バンドを組んでボーカルをやっていました。

 -なぜ劇団に挑戦しようと思ったのですか

 前田 グランプリをいただいてからは、歌や演技などいろいろなレッスンを受けていました。芸能界で絶対成功したいと思う中で、「来るもの拒まず」でオーディションを受けていました。劇団と聞いたときも、歌えるかもとか、小さい頃からやっていたダンスができるかもとか、やりたいことが全部出来るかもって思いました。

 -自分の強みは何でしょうか?

 前田 特技は歌だと思っています。最初は、周りに歌がうまい子や技術が高い子がたくさんいて、特技とは言えなくなってしまうかも…と思ったときもあったのですが、最近になって、「やっぱり歌は譲れない」という気持ちが強くなってきました。絶対誰にも負けたくない、負けず嫌いな頑固な気持ちは強みになるのかなと思います。頑固すぎて前に進めないこともあるとは思いますが…。

 岡田 マジメ!(笑い) 悠雅は、とにかく負けず嫌いなんです。派生ユニットの中でも常にメラメラしてますし。私にないところなので、うらやましいです。

 -趣味とかマイブームはありますか

 岡田 私は人間観察です。電車で通いながら、人のクセとか見るのが好きです。東京はいろいろな人がいておもしろいです。

 前田 たまに演じていても「そのキャラ、どこの引き出しから出てくるの?」という時があるんですけど、それかあ(笑い)。私は、駅のホームの立ち食いそばに行って、かき揚げそばを食べるのがストレス発散になって、ハマッてます。稽古終わりに、閉店ギリギリの「なんでこの時間に入ってくるの?」という時間におそば屋さんに入って、1人でそばをすすって、温まって帰るのがマイブームです。かき揚げは、つゆに浸さない派です(笑い)

 -改めて本公演に向けてアピールをお願いします

 前田 とにかく本公演を成功させて次につなげていくのが、劇団全体の目標です。人間にとって大事なんだけど忘れがちなものを伝えられそうな作品。見た後に、「明日頑張ろう」とか自分たちが発した言葉が、誰かの支えになったらいいなと思います。

 岡田 丸尾さんの書いてくださる脚本には、心に刺さる言葉が多いんです。それを伝えたいですし、経験が少ない私たちだからこそ伝えられる熱量とか、必死さが出る作品にしたい。旗揚げという大事な公演なので、もっと期待してもらえるようにしたいですし、将来的には、劇団なのに観客動員がすごいとか、劇団といえば「4ドル50セント」と言われるくらいになりたいです。

 -個人的な目標はありますか

 前田 いつか30人で「ミュージックステーション」に出たいです! 「こんな暑苦しい人たちがテレビで歌って踊ってる!」となれば、もしかしたら驚いてくれるかもしれないので…。個人的には、ファッション面でも活躍したいです。グランプリをいただいたオーディションの発表が「東京ガールズコレクション」のステージだったので、今度はランウエーを歩く側で戻りたいなと思います。目標は菅田将暉さんです。

 岡田 助演女優賞とかもらえるような、作品には欠かせない存在を演じられる人になりたいです。ムロツヨシさんとか、木南晴夏さんが大好きで憧れ。あとはとにかく動物が好きなので「天才!志村どうぶつ園」に出てみたい! カピバラが大好きで、私も歯が大きくて似ているので一緒に温泉につかりたいです。よろしくお願いします!

 ◆劇団4ドル50セント 秋元康氏とエイベックス松浦勝人代表取締役CEOが共同で立ち上げた劇団プロジェクト。劇団名は、60年代の人気女性歌手ジャニス・ジョップリンさんがホテルの一室で27歳の若さで亡くなった時、4ドル50セントを握っていたとされるエピソードが由来。昨年8月にお披露目され、同11月にプレ公演(東京・青山スパイラルホール)を開催。ほぼ演劇素人の30人が所属し、現役の植木職人(うえきやサトシ)から、元AKB48研究生(長谷川晴奈)までメンバーの経歴もさまざま。前田や国森桜ら、女性8人のボーカルダンスユニットも結成。

 ◆岡田帆乃佳(おかだ・ほのか)1996年(平8)9月1日、愛媛県生まれ。10年に愛媛で行われた「a-nation」にバックダンサーとして出演し、スカウトされ上京。15年舞台「悲しき天使」など出演。同年からはNHKEテレ「すイエんサー」ガールとしても活躍。163センチ。

 ◆前田悠雅(まえだ・ゆうが)1998年(平10)10月19日、千葉県生まれ。16年に「東京ガールズオーディション」でグランプリを獲得し芸能界入り。高校時代はダンス部と軽音楽部に所属し、ボーカル担当。劇団では8人組の派生ユニットのメンバー。161センチ。