第2のコロンボを舞台化、山口馬木也「最強の結末」

舞台「殺しのリハーサル」に主演する俳優山口馬木也

 「刑事コロンボ」の原作者が82年に書き下ろしたミステリー「殺しのリハーサル」が俳優山口馬木也(45)主演で舞台化され、12日から全労済ホール/スペース・ゼロ(東京都渋谷区)で上演される。精巧なトリックと、どんでん返しの結末に挑む山口に意気込みを聞いた。

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 -オリジナルは、あの「刑事コロンボ」を生んだ名コンビ、リチャード・レビンソンとウィリアム・リンクが書き下ろしたテレビ映画。NHKでも放送され、日米のミステリーファンから高い評価を得ている作品ですよね。

 山口 脚本を読んで、ものすごく面白くてぜひやりたいと。恋人だった主演女優を失った脚本家アレックスが、「新作の打ち合わせ」と称して当時のプロデューサーや監督、役者らを劇場に呼び集め、殺人犯を暴いていくというサスペンス。突き止めた真相を脚本にして、あの夜の出来事を再現するという、脚本家らしい暴き方が面白いんです。

 -オリジナルは映像作品ですが、劇場という閉ざされた空間での応酬は、演劇向きでもありますよね。

 山口 そうですね。登場人物たちが「僕らが殺したとでもいうのか」みたいな空気になっていく課程を、同じ空間で体感してもらえるのは大きいですね。それぞれの証言や回想が食い違っていたりする世界観が映画「羅生門」と似た感じがあって、サスペンスと人間ドラマがガチッとはまった見ごたえがある。この中の誰が犯人なんだろうと、想像力が広がってわくわくする作品です。

 -演じるアレックスはどんなキャラクターなのですか。

 山口 ト書きに書かれているのは、「スラッとしてジャントルマンでチャーミング」という人物。理想の男性だと思います。

 -演出の鈴木孝宏さんは「山口さんにぴったり」と話していました。「オリジナルと同じ40代の二枚目。誠実でちょっと不器用という個性も含め、理想の配役を得た」と。

 山口 そういうアレックスに見えるかは、共演の皆さんにお任せします(笑い)。

 -「おれについてこい」のタイプではないのですか。

 山口 そういうタイプじゃないんですよ(笑い)。自分でああだこうだ考えても、周りとの関係性がなければ何者か分からないのが芝居の難しいところ。相手がタメグチで話すから友達関係と分かるとか、相手が命令調で話すから後輩と分かるとか。どのキャラクターも立っているので、アレックスを周りのみんなに作っていってもらわないと。だからみんなに「お願いします」って頭下げてます(笑い)。

 -共演は、サヘル・ローズさん、峰さを理さん、津田英佑さんら個性的な面々。AKB48の太田奈緒さんみたいなフレッシュな人もいて、バラエティーに富んでいますね。

 山口 頼もしいです。キャリアはまちまちですが、経験値が高い人はもちろん、経験値の低い人の強みというのもあるじゃないですか。冷静じゃなく突き進む力のキラキラ感とか。刺激になるし、そういう人の方が合っている役もある。この作品の「チーム」というテーマそのものだと思います。僕らもチームとして、お客さんに楽しんでもらうという目的だけは崩さずに作り上げていきたい。

 -お客さんをもダマさなければいけない緻密な作品ですから、チームワークは大事ですよね。劇場を舞台にした劇中劇で、舞台のバックヤードものというのもわくわくする設定です。

 山口 役者にとっては難しいんですけどね(笑い)。芝居の中でさらにひと芝居打つ、みたいな演じ分けが必要なので、新鮮な気持ちで稽古に臨むようにしています。

 -華やかに見える舞台も、バックヤードはいろいろあるんでしょうね。

 山口 演劇関係者は我が強くて純粋な人たちの集まりだと思うので、お客さんが見ているものとは全然違うものがバックヤードにはありますね。みんな、この歳でこんなに怒られるかというくらい怒られたりするし(笑い)。毎回、自分のいやなところを発見できてしまう。いい経験ですけどね。

 -山口さんは映画、ドラマ、演劇と幅広く活躍していますが、舞台の魅力は何ですか。

 山口 目の前で拍手をいただいたり、反応がダイレクトに返ってくるところ。自信の場面でものすごくハズすとか、逆に何でもないところで大ウケするとか(笑い)。以前、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊先生にお話をうかがう機会があったんですけど、もはや素粒子レベルの物質が「気」に影響しているとしか思えない(笑い)。そういうライブ感をお客さんと共有するのが楽しいところ。お客さんが育ててくれるんです。

 -主演として、プレッシャーはありますか。

 山口 今はないですね。原作が最強に面白いので。サスペンスには人を引きつける力がありますし、どんでん返しの後で「そうだったのか」ともう1回見たくなるような作品。あっという間の2時間をぜひ楽しんでいただきたいです。

 ◆公演情報 4月12日~同15日まで、全労済ホール/スペース・ゼロ(東京都渋谷区)で全6公演。出演は、山口馬木也、サヘル・ローズ、津田英佑、峰さを理、庄野崎謙、太田奈緒(AKB48)ほか。